この初顔合わせから世界進出が始まる(左から)池将也さん、長谷川絢さん、近藤雅代さん、コシノジュンコさん、青柳慶子さん、木崎和寿さん(谷口倫都さんは欠席)=竹田市植木の竹田総合学院
「竹工芸」を世界へ。大分市美術館が文化庁の支援を受け、竹工芸作家の育成と国際的な発信を目指した事業を進めている。育成対象となった作家6人の指導者として、世界的デザイナーのコシノジュンコさんを迎えた。7日、竹田市の竹田総合学院で、作家たちとコシノさんが初めて顔を合わせた。
コシノさんの到着を待つ間、作家たちは和やかに談笑していた。そこへ、ふらりと自然体で入室してきたコシノさん。あまりのさりげなさに最初は誰も気付かなかった。
自己紹介の後、コシノさんは作家たちの作品解説に耳を傾けた。用いられた技術や造形の工夫について質問し、感想を伝えていった。そして「シンプルでダイナミック」と評した木崎和寿さんの作品にひらめきを得たのか、「次のショーでスカートにできないかしら」とデザイン画を描き始めた。
同作は2018年の日本新工芸展(日本新工芸家連盟主催)入賞作で、櫛目(くしめ)編み技法を使った赤褐色の作品。竹ひごのバネを生かし、開花前の梅の膨らみをイメージしている。次々とアイデアを提案され、予想外の展開に気後れ気味の木崎さんだったが「自分が大事にしている表現や技法を生かそうとしてくれている」と受け止めていた。
その様子に長谷川絢さんは「発想の早さにファッション界のスピードを感じた」という。「難しいと思ったけれど、世界に竹をアピールするにはその一歩を踏み越えていくパワーも必要」と静かに発奮していた。
池将也さんは「世界に出る時、日本を意識しましたか」と尋ねた。「日本はテーマにはしなかった。自分自身でいいの。そうして今があるの」と即答。個を打ち出すことで世界に存在感を示してきた姿勢が見えた。
今回の初対面にコシノさんは「普段は作品だけで作家の顔が見えないから」と喜び、「基礎があって、熱意、人のつながりがあれば可能性はいくらでも広がる。環境も素晴らしい。この出会いからグローバルな活躍をしていただきたい」と期待を寄せた。今後もコシノさんと作家たちは対話を重ね、その成果は来年秋に披露する予定だ。
<メモ>
大分市美術館による竹工芸家育成と海外展開は文化庁が所管する独立行政法人日本芸術文化振興会からの助成を受けた事業。海外展開を視野に、芸術家や学芸員の人材育成・文化施設の機能強化を図る「文化施設による高付加価値化機能強化支援事業」に昨年9月採択された。助成額は5700万円で2024年から3年間。事業名は「大分発アートプラクティス発信事業―竹/キュレーション・プロデュース」。