(左)「南さんにつなげてもらった縁を大切にしたい」と話す稲駿介さん=国東市国東町、(右)準備から関わったイベントでかき氷を作る高校生ら=日田市のJR日田駅前広場
国東市の第三セクター「未来企業カレッジ」代表取締役の南暁さん(40)は、創業支援で大事にしていることとして「できるだけ具体的に夢を見せる」ことを挙げた。静岡県出身の稲駿介さん(25)は2018年6月、南さんの支援を受け、ウェブ関連の業務を行う「ローカルホスト」を同市で立ち上げた。
南さんとは「地方にこそICT(情報通信技術)が必要」という考えを共有する。社名にも「技術で地域をもてなしたい」という思いを込めた。「地方は人口が少ない。一人が担う役割が増えている。技術で解決できることは多い」と話す。
現在は、IoT(モノのインターネット)技術を利用した高齢者見守りサービスの構築などに取り組む。
南さんのように、後に続く人の挑戦を応援したいと考えている。「将来は国東でAI(人工知能)関連の人材を育てたい。AIで国東を盛り上げたい」と夢を描く。
南さんは「創業して終わりじゃない。これからが大切。国東を代表する企業になってほしい」と期待する。
岡野涼子さん(41)が児童や生徒へのキャリア教育に取り組む一般社団法人「NINAU(になう)」を設立したのは、「日田は好きだけど何もない」という高校生の発言を聞いたことがきっかけだった。
NINAUに集う高校生たちは8月、JR日田駅前でかき氷イベントを企画運営した。岡野さんも一緒になって奔走した。
三隈高2年の石松咲来(さくら)さん(16)は「準備は大変だったけど、達成感が気持ちよかった」と振り返る。藤蔭高2年の小畑彰斗さん(17)は「日田の良さはたくさんある。イベントで発信したい」と話す。2人は「進学で日田を離れたとしても、将来は絶対に帰ってきたい」と口をそろえる。
昭和学園高2年の井上竜也さん(17)は、イベントを通して「働くことを意識するようになった」と言う。ただ、「最先端の技術に興味がある。日田では望むような仕事に就くのは難しい」と感じている。
岡野さんは、高校生たちの夢を頼もしく感じている。「一度は外の世界を見てほしい。あらためて日田の良さが分かるから」
進路はそれぞれだが、日田を、そして日本を担う気持ちは着実に育っている。
受け継がれる挑む心―。苦楽を共にした経験が、次世代を新たな行動へと導く。
【宣言】やってみせ、やらせてみて、一緒になって泣き笑う。具体的な夢は力を持つ。挑む心は伝染する。