2025813日()

(1)前向きさは人を引き寄せる

> (右)「カモシカ書店はずっと大分にあってほしい」と話す波多野樹さん=大分市中央町、(左)「Beppu Sake Stand 巡」店長の梁原仙喜さん。「酒というツールで楽しい時間を過ごしてほしい」=別府市北浜
 ミライデザイン宣言ハピカム第5回「挑む心、発信のススメ」(8月25日・別府市の別府ヒットパレードクラブ)では、出演者5人が地域になかった新しい価値の創造に挑む心、それを広げる発信力について語り合った。5人のフロントランナーの挑戦は、地域に何をもたらすのか。それぞれの活動と、関わる人たちの思いを掘り下げる。
 「自分が今居る場所(高校)が辛くても、街には価値観も空気も全く違う別の場所がある。そのことが当時の僕を随分と楽にしてくれたのだ」

 大分市の「カモシカ書店」スタッフの波多野樹さん(21)は、ハピカムに出演した岩尾晋作さん(36)が経営する同店の扉を開けたときの印象をウェブメディア「大分で会いましょう。」に書いた。高校では放送部に所属していたが、熱心な部員ではなかった。集団生活に違和感があった。卒業から1カ月後、古本と新刊を取り扱う書店にカフェが併設された同店で働き始めた。

 仕事の傍ら、今年4月には作家、坂口恭平さんのトークイベントを企画した。「自分でリスクを負ってみないと分からないことがある」と岩尾さん。波多野さんの挑戦にあえて口を出さず、告知や集客のサポート役に徹した。会場は満席となった。

 スタッフになって3年が過ぎた。岩尾さんがつくった場所を守りながら、ウェブメディアへの寄稿も始めた。岩尾さんの影響は認めるが「100パーセント重なるわけではない」。ただ今は「近くにいて、知識や経験を吸収したい」と思っている。

 梁原仙喜(やなはら・そに)さん(29)は、店長として「Beppu Sake Stand 巡(じゅん)」のキッチンに立つ。今年6月、酒屋と立ち飲みスタイルのバーが一緒になった店を別府市にオープンした。

 それまで韓国料理のカフェを営んでいた。純米酒やナチュラルワインと出合って、味わいの奥深さや造り手の真摯(しんし)な姿勢に心を打たれた。「韓国料理と合わせてみたい」。オーナーの丸田晋也さん(30)=大分市の「丸田酒舗」店長=と共に新たな一歩を踏み出した。

 酒に関する知識を重視するのは丸田さん譲りだ。「自信を持って提供したいから」。酒蔵を訪問したり、セミナーに参加したりして理解を深める。

 店は午後8時で閉める。子育てとの両立と、店名に込めた「別府の飲食店を巡ってほしい」という願いからだ。

 「『巡』を食の案内所と思ってもらえれば。別府を訪れるきっかけになるような場所にしたい」と先を見据える。

 挑む心が宿る場所には人が集まる。そこから新しい挑戦が始まる。

 【宣言】チャレンジする心は磁力を生む。前向きな気持ちは人を引き寄せる。