2025101日()

(4)「支える」喜びを味わう

> メンバーが自宅で育てた花を持ち寄り、会場のトイレや控え室に飾る準備をする「環境」グループ=2日、大分市の昭和電工ドーム大分
 スポーツは「する」「みる」だけでなく、「支える」という関わり方もある。
 6年ぶりにJ1の舞台に戻ってきた大分トリニータには、ホームゲームの運営を支えるボランティアの会がある。ホーム開幕戦の2日、昭和電工ドーム大分に会員約160人が集まった。会場清掃やチケットもぎり、観客誘導など10グループに分かれて仕事をする。佐藤光史会長(70)は「お客さんが楽しんでくれることはもちろん、ボランティアも楽しめるように心掛けています」と話す。
 「もう少し右、よいしょっと」。正午前、設営グループはピッチ周辺のトラック部分に人工芝を敷く作業をした。10人がかりで重いシートを持ち上げた。二橋由紀さん(48)は「観戦するよりもチームとの距離感が近づく」と感じ、入会して7年目。「選手が気持ちよく試合をするための準備。すごくやりがいがあります」と力仕事に加わった。
 午後1時。イベントグループリーダーの松田勇治さん(71)は外のイベント会場を見守っていた。「活動が生活の軸になっている」と言うようにチームがJFL時代の1998年からボランティアを続ける。キックターゲットに列を作る子どもたちに「開場前から多くの人が楽しんでくれている。うれしいですね」と目を細めた。
 午後1時半の先行入場開始後、再入場ゲートでチケットのチェックをしていた堺井俊晴さん(52)は昨年入会した。製造業に勤めており、「お客さんとじかに接することが魅力」と目を輝かせる。来場者から座席の場所やイベントの内容を聞かれることも多く、「会場図やスケジュールは家で勉強しています」と笑顔で応対を続けた。
 キックオフの午後4時、今季入会した高瀬輝男さん(66)はチケットもぎりの手を休め「立ち時間が長くて疲れました」と笑った。「でも、トリニータは大分の誇りですから」。すぐに持ち場に戻った。
 この日の来場者は1万3千人を超えた。サポーターは声をからして応援し、ボランティアは裏方の仕事を続けた。どちらも大分トリニータという共通の話題、誇りを持ち、それぞれ喜びを味わい、絆を育んでいる。副会長の吉田由利子さん(64)は「本当にみんな、にこにこやっている。これからも一緒に盛り上がりたい」。試合終了後、仲間と会場の片付けを始めた。

<メモ>
 大分トリニータボランティアの会は現在約230人が登録。昨シーズンは197人。現在も募集中で、シーズンが始まってからも増えている。高校生以上が登録可。花見や忘年会、近県のアウェー観戦研修ツアーなど懇親の機会もある。

(宣 言)
 スポーツは地域社会と人を幸せにする力がある。それぞれの関わり方で、それぞれの喜びを味わおう。