危険運転致死傷罪の数値基準導入に向け、たたき台が示された法制審議会の刑事法部会=29日、法務省
大分市の時速194キロ死亡事故で適用基準の不明確さが浮き彫りになった危険運転致死傷罪について、見直しを検討している法務省は29日、数値基準を導入するためのたたき台を法制審議会(法相の諮問機関)の刑事法部会に出した。最高速度60キロ以下の一般道などでは、一律に適用する超過速度を▽40キロ▽50キロ―とする2案を提示した。飲酒事故も体内アルコール濃度での線引きを示した。
A案は一般道など(最高速度20~60キロ)を40キロ超過した場合で、B案は50キロを基準にした。
A案だと、例えば最高速度50キロの国道や県道を時速90キロを超えて走行し、死傷事故を起こしたドライバーに危険運転致死傷罪(最長で拘禁刑20年)が適用される。
車やバイクのみが通行する高速道(最高速度70キロ以上)は、両案ともにそれぞれ10キロ高い基準にした。
基準を1キロでも下回ると処罰できないのは社会の理解を得にくいとして、基準値に近く「重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度」であれば適用できる要件も加えた。
飲酒はA案が呼気1リットル当たりのアルコール濃度0・25ミリグラム以上で、B案が0・5ミリグラム以上。いずれも運転への影響が明確に表れる濃度として設定しており、道交法違反の酒気帯び運転(0・15ミリグラム以上)よりも高い。
この日は東京・霞が関で第5回会合があり、委員の刑法学者や被害者遺族らが非公開の議事で意見を交わした。
数値の設定を巡っては、被害者団体や弁護士らから賛否があり、今後、修正される可能性もある。早ければ年内にも結論をまとめ、法務省は来年の通常国会での法改正を目指す。
現行法は猛スピードの事故が「進行を制御することが困難な高速度」、飲酒の事故が「アルコールの影響で正常な運転が困難」と規定している。数値が示されておらず、適用基準が分かりにくいとの批判が出ている。
たたき台には、車のタイヤを横滑りさせながら運転する「ドリフト走行」を新たに危険運転罪に加える案も入った。