舞台あいさつに登壇した主演の岸田麻佑と徳井義実監督=別府ブルーバード劇場
別府短編映画制作プロジェクトの第5弾「喝采は聞こえない」のお披露目上映が6日、別府市の別府ブルーバード劇場であった。主演の岸田麻佑と、監督や撮影などを務めたお笑い芸人の徳井義実が舞台あいさつをし、見どころや撮影秘話を明かした。
「人生切り替えエンターテインメント」と銘打った一作。地方劇団の舞台に立ち続ける森いつきは、11年の役者人生の中で主役を張ったことがない。華のある後輩がステージの中心で、注目を集めているのを横目にするばかり。自分の能力を考えると、役者として潮時を迎えているようにも思うが、このまま諦めるのは、負けて逃げているような気がしてしまう。今後の人生に向き合った彼女は、ある行動を取るのだが…。
主人公が一つの人生を諦め、第二の人生を迎える瞬間を、ユーモアの効いた会話で軽やかに描いている。
完成した映像を初めて見たという岸田は、リアリティーがあって日常を切り抜いたような作品と感想。主人公の友人を演じた原直子について、同じガールズグループの仲間で付き合いも長く、現実でもせりふと同じような会話を交わしていると明かした。
徳井は、出演者がNGを出すこともなく完璧に演じてくれたと賛辞を送った。一方、吉本興業の社員が居酒屋の店員役として出演したシーンに関しては、タイミングや雰囲気にこだわってしまい何回も撮り直してしまったと振り返り、観客を笑わせた。作品は同劇場で上映中。
■「諦めることを楽しむ感覚伝われば」
上映会後、「喝采は聞こえない」の徳井義実監督が作品に懸ける思いを語った。
―お客さんの反応を見ての感想は。
「お笑いのネタを見せるときは、お客さまの反応を想像できるが、今回に限っては、手応えがちょっと分からなかった。どういう見方をしたらいいんだろうと思う人もいたのではないか。感想をSNSなどでつぶやいてほしい」
―物語の核となる「諦める」というテーマは以前から考えていたのか。
「元々、諦めるっていう感覚はなかった。数年前に大きな失敗をしてしまい、向き合うようになったのかもしれない。しかし、この作品はその経験とは別の物。自分の周りでも仕事がうまくいかず、別の道を選ばざるを得ない人などがいっぱいいる。そういう人が暗い思いを抱えずにいてほしいという、そんな気持ちから生まれた気がする」
―監督だけでなく、出演や撮影など幅広く関わっている。
「撮影に関しては素人だが、動画配信をやっているので、挑戦してみようという気持ちだった。機材に関しても好きだったので、自分の持っているものを使ってみたかったっていうのもある」
―鑑賞する人に一言。
「諦めることって口に出すのも、気持ちのよくないこと。だけど、次のステップに進んだ方がいいこともある。諦めるということを派手に楽しむ感覚があってもいいんじゃないかって伝わればと思う」