対局場として使用される宇佐神宮境内の勅使斎館=宇佐市南宇佐
将棋の第83期名人戦7番勝負の第4局が5月17、18日、宇佐市の宇佐神宮で開催されることが決まった。同神宮は今年、御鎮座1300年を迎え、関係者が記念事業として誘致に取り組んでいた。大分県内では昨年5月に別府市であった第82期第4局に続き、2年連続の開催となる。
名人戦は1935年に始まり、将棋界に八つあるタイトル戦の中で最も長い歴史がある。今期は藤井聡太七冠(22)が3連覇を目指す。挑戦者は2月下旬にも決まる。
宇佐市では2020年に第78期第2局が予定されていたが、コロナ禍で中止になった。昨年7月、市、宇佐商工会議所、同神宮、将棋関係者などでつくる対局誘致委員会を改めて設置。努力を続けてきた。
是永修治市長は「勝負の神様ともいわれる八幡神が見守る中、歴史的な対局になることを願いたい」。同会議所の渡辺幹雄会頭は「全国から多くの人に訪れてもらい、観光や地域経済の発展、活気ある街づくりにつなげたい」と期待する。
誘致委員会は開催決定を受け、実行委員会として関連イベントの準備も進める。勝負めしなどのメニュー作りをスタートし、市内の飲食店などから自慢の一品を募る。3月末までにめし、スイーツ、ドリンクの3部門で選考する予定だ。
対局場の「勅使斎館(ちょくしさいかん)」は10年に1度、天皇の勅使が同神宮を訪れる「勅祭」で使用される建物。過去に囲碁の対局で会場になったことはあるが、将棋は初めてという。
委員会メンバーで日本将棋連盟国東八将会支部の川本昌光監事(69)は「県北地域でさらに将棋文化が発展するきっかけになれば」と話した。
■5年越しの悲願達成
<解説>宇佐神宮御鎮座1300年の節目に合わせた将棋名人戦の誘致が成功した。関係者にとってはコロナ禍による中止から5年越しの悲願達成となった。
中止後も再誘致に向けた灯を消さず、機会をうかがっていた。昨年5月の別府対局時も宇佐の関係者が別府を訪れ、主催者側のキーマンらと接触。「次こそ」との意欲をアピールしてきた。
最初の誘致時に予定していた宿泊施設が中止後に閉館するアクシデントもあったが、宇佐市内は御鎮座1300年を見据えた宿泊施設の充実が進み、関係者が泊まる場所の確保という条件もクリアできた。
知名度抜群の藤井聡太七冠を招こうと全国的に誘致競争が激しくなる中、2年連続での県内開催に結び付けた。将棋ファンから宇佐市、大分県への関心が集まるだろう。地域振興への絶好の機会を具体的にどう生かすか。実行委の「次の一手」が注目される。