受験体験談 大分工業高電子科を卒業した小川心花さん
今年3月に大分工業高電子科を卒業した小川心花(みはな)さん(18)は、大分大理工学部理工学科機械工学プログラムに総合型選抜で合格した。中学の時ロボットコンテストで全国大会に出場したことで、プログラミングに興味を持った小川さん。高校の課外活動で、仲間と小型水力発電機の開発に打ち込んだ経験が大学進学の決め手になった。
■学校主催の発明家養成講座に参加
大分市稙田南中3年の時、技術の授業でロボットプログラミングを学び、ロボットコンテストの全国大会決勝戦まで勝ち進んだ。「プログラミングでロボットの動きがさまざまに変わることが楽しくて没頭した」という小川さんは、プログラミングが学べ、自宅から通いやすい大分工業高電子科を進学先にした。
高校に入学したばかりの2022年4月、校内の掲示板で、学校主催の発明家養成講座でメンバーを募集するポスターを見つけた。ポスターに書かれた「発明家になりたい人集まれ」という言葉にひかれ、機械科の職員室にいる担当の佐藤新太郎教諭を緊張しながら訪ねた。「高校生活が始まり、中学時代になかった専門教科を学ぶことへの期待と好奇心でいっぱいだった」と振り返る。
機械科を中心に10人ほどの生徒が講座に集まった。街灯がない同校の通学路を照らすため、学校近くの川の流れを活用してエネルギーを生み出す小型水車を開発する水車プロジェクトが始まった。
佐藤教諭のアドバイスを聞きながら、仲間とアイデアを出し合うのは面白かった。3DCAD(3次元コンピューター利用設計システム)で設計図を作った。木や竹、工場の廃材などで試作機を作ったり、3Dプリンターで実際の小型水車を作ったりして、実験と改良を重ねた。実験がうまくいくとうれしくて、自分たちが製作したものが、地域や世の中の役に立つかもしれないと考えるとやりがいを感じた。
水車プロジェクトを通じて、ものづくりの面白さに目覚めた小川さん。機械工学への関心が強まり、本格的に学ぶために大学進学を考え始めた。高校2年になり、進路担当の教師に「大学を目指すのなら、自分の成長のために高い目標を掲げて頑張りなさい」と激励されたことで、大分大合格を目標に定めた。
■自分の言葉で意欲と熱意伝える
総合型選抜の1次試験科目は自己推薦書、調査書、活動報告書。調査書の評定平均を上げるため、それまでの勉強方法を見直した。特に苦手科目だった地理歴史、公民の克服に力を入れ、自分が覚えやすいように用語を分類していく勉強法を実践した。
教科の勉強だけでなく、複数の関連資格を取得したほか、卓球部の部活動にも励んだ。活動報告書は、各種コンテストで受賞し校内外で高く評価されていた水車プロジェクトについて、佐藤教諭から指導を受けながらまとめた。
2次試験の面接対策は試験直前の夏休みに取り組んだ。声は大きいが、緊張しやすく敬語が苦手。教師を相手にした練習でも、用意していた言葉がすらすら出てこずに苦しんだ。だが大学で学ぶ目的は明確に頭の中にある。「素の自分を見せよう」と覚悟を決めた。本番では自分の言葉で意欲と熱意を面接官に伝えることができた。
水車プロジェクトは特許を取得し、実用化を目指して後輩に引き継がれている。小川さんは「プロジェクトを通して仲間と協力してものづくりに取り組む楽しさを知った」と振り返る。それまでの自分は失敗を恐れて挑戦をせず逃げていた。失敗しても仲間と協力して補い合うことで、失敗を乗り越えられると学んだという。
4月からいよいよ大学生。「高校で学んだ電子工学と大学で学ぶ機械工学。両方の知識を基に、将来は人々の役に立つ製品の開発や設計の仕事をしたい」と夢を描いている。