事例を発表する中津東高校マーケティング部の部員
自然、歴史・文化といった資源を生かす体験活動を通して、地域とつながり、将来を担う世代を育み、自らも成長する―。「地域の学び」を日々実践している出演者5人は、それが持つ力を熱く語り合った。
独自の体験教育を進める佐藤陽平さんは「体験イコール大変。そんな概念を変えたい」と切り出した。同じ料理でも包丁を使えない子は手を切ってしまうように、体験活動ではその人に応じた課題が表れる。「便利で快適すぎると自分の力を使う必要がない。不便さを通して、子どもたちに自分を律する力が育まれる」と有益性を説いた。
部活動の仲間と商店街での販売、商品開発などに汗を流す成重さりなさんは「他団体とのコラボ」を課題に挙げた。マーケティング部だけでの活動が多いが、市内の各種団体との連携を深める中で「大きく盛り上がるイベントができれば」と語った。地域活性化の一翼を担うのが目標という。
学生と一緒に各地に出向き、地域連携活動に取り組む高見大介さんは「(人間力を養うには)時間、仲間、空間の三つの『間』が必要」と提言。田植えや稲刈りといった農作業を例に挙げ、「大変だし、自分の成長がすぐに目に見えるものではないが、それを続けることで仲間意識が芽生える」と、非効率性が持つ学習効果の高さを強調した。
金成妍(キムソンヨン)さんは児童文学者・久留島武彦の業績を子どもたちに教えた経験から「へーっと思ってもらえる知的刺激を与えることが大事」と指摘。「何も知らずに記念館を巡っても、難しいと思われる。体験する前にいろいろ想像させると、ワクワクしながら見てくれるようになる」と、伝える側の工夫・努力が必要とした。
水上スキーのインストラクターを務める中村大悟さん。全国各地の大学が毎年合宿をしており、「経済効果はもちろん、地域の盆踊りに学生が参加することもある」と紹介。不登校の子どもたちが体験に訪れることもあり、「学校に行けなくても、耶馬渓アクアパークには来てくれる。そういう子を元気にできる場になれば」と抱負を語った。
会場からは、現代社会で進む人間関係の希薄化を踏まえ、「どうすれば壁を壊し、人とつながりを持とうと思ってもらえるのか」との質問も。アドバイザーを務めた上田英司さんは「他者とつながり、何かを一緒にやろうとしてもお互いを知らないとできない。まずは他者がどんな志向性か知るため、対話をすることが大事だ」と答えた。