赤神諒氏による本紙書き下ろしで、2022年9月23日連載スタート。豊後の戦国大名・大友宗麟を支えた猛将・立花(戸次)道雪の一人娘で、「女城主」として名をはせた誾千代が主人公。史料が少なく謎に包まれた誾千代を、夫である名将・立花宗茂との真実の愛をテーマに書く。赤神氏がライフワークとして取り組む「大友サーガ(壮大な歴史物語)」の第8弾となる。
元和7年(1621年)3月に柳川藩主として返り咲いた立花宗茂(統虎)は、真っ先に良清寺を建立して約20年前に世を去った妻、誾千代を弔った。意外な行動に家臣は驚く。宗茂は菩提寺の開山として、在りし日の誾千代をよく知る誠応上人を選び、その供養を懸命に懇願する。
同行していた老臣で誾千代の教育係を務めた城戸知正が、生前の誾千代から託されていた肖像画を披露すると、宗茂は描かれた美しい姿を見て、はらはらと涙する。誾千代との不仲は生前からささやかれていた。事情を何も知らぬ家臣や世人は、宗茂による亡き正室の菩提寺建立を養父戸次道雪への敬慕のあらわれととらえ、死後20年を経てなお正室を立てる宗茂の義理深さに感じ入っている。それも間違いではない。
だが、2人は決して不仲などではなかった。
宗茂は愛しても無駄だと知りながら、それでも妻をひたむきに愛し続けた。誾千代も必死でそれに応えようとしたのだ――