大分リハビリテーション専門学校言語聴覚士科学科長の平岡賢さん
言語聴覚士は1997年に国家資格となった、比較的新しい職業です。子どもからお年寄りまで幅広い年代を対象に、うまく話せない、よく聞こえない、うまく食べられない人たちに、検査や訓練、助言といった支援を行います。
かつては高齢者を対象にした仕事がメインでしたが、数年前からは子どもの療育施設や放課後等デイサービスなどが急増し、人材不足の状況が続いています。「先輩」がいない職場もあり、パイオニア精神にあふれている人にとっても絶好の機会と言えるでしょう。
人と接することが好きであれば大丈夫。仮に人見知りでも、コミュニケーション能力は経験を積みながら身に付いてくるものなので心配はいりません。性差を問わず活躍でき、筋力を必要としないため、女性に人気が高いです。結婚や出産後も続けやすいのが大きな魅力とも言えます。
「最後まで口から物を食べたい」「人生を終えるときに家族にお礼を言いたい」など患者さんの切実な思いに寄り添いながら、徐々に改善されていく患者さんや家族の笑顔に接したとき、何物にも代え難いやりがいや喜び、充実感を味わえる仕事です。
<言語聴覚士になるには…「国家試験」に合格すること。>
高校を卒業後、言語聴覚士を養成する四年制大学または専門学校(3~4年制)に入学するケースが多い。言語・コミュニケーション行動を支える学科などの基礎科目と専門科目、臨床実習などを通じ、知識や技能を身に付ける。卒業すると受験資格が得られる。
一般の四年制大学の卒業者でも、養成課程のある専門学校で2年間学び、卒業すれば受験可能。いずれの場合も卒業見込みを含む。
国家試験は毎年2月にあり、合格率は6~7割程度。先に挙げた教育機関では国家試験対策も行われている。合格し免許証の交付を受けた後は即戦力として、医療や福祉などさまざまな分野でスキルを磨き、キャリアを積んでいくことになる。
<活躍する分野>
■医療
病院やリハビリテーションセンターなどで勤務。高次脳機能障害のため失語症や記憶障害などのある患者に、発声や発語、摂食や嚥下(えんげ)の訓練を行い、社会生活への復帰を手助けする。
■福祉
高齢者施設や、訪問リハビリテーションなどの居宅サービスが仕事の場。利用者が自分の思いを言葉にすることや、食べ物ののみ込みがうまくできるよう、さまざまな訓練を行う。家族の相談にも乗る。
■保健
保健所などで1歳半健診や3歳児健診などに加わり、子どもの発達などをチェック。現場の評価や指導に対し、助言や支援を行う。
■教育
小児療育施設や特別支援学校などで、言葉が遅れている子に言葉を引き出す訓練をしたり、子どもを取り巻く環境を整えたりする。