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202049日()

東西南北

2020.1.25



 1934(昭和9)年、高知県の室戸岬付近に上陸した台風は関西を襲い、強風と高潮で多大な被害をもたらした。死者・不明者は3千人を超えた。室戸台風である▼その災害直後に「天災と国防」という一文を書いて、都市化と自然軽視への警鐘を鳴らしたのが、物理学者で随筆家だった寺田寅彦である。そこで彼はこう書いた。「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す」▼近年の地震や風水害のたびに、いつもこの言葉を思い出す。だが今では、それにもう一つ加えたいものがある。世界保健機関(WHO)も重要視する新型インフルエンザや新型コロナウイルスといった世界規模の感染症である▼コロナウイルスは、人に感染すると重症肺炎を引き起こす恐れがある。2003年に中国南部で、12年には中東で発生して流行し、それぞれ「SARS」「MERS」と呼ばれた。そして今回、新たに中国・武漢市で発生した▼いずれも動物から人に感染しているが、その後、人から人への感染に発展した。SARSの時には、アジアを中心に774人の死者を出している。拡大が心配だ。いかに早く封じ込めるかが鍵である▼文明の発達とともに人の移動が激しくなる。人だけではない。かつては一地方に収まっていた病気が世界規模になることでもある。便利さと引き換えのリスク。寺田の言葉が何度も思い出されるはずである。
2020年1月25日

東西南北

 

 大分合同新聞の顔とも言えるコラムです。朝刊1面に掲載。短い文章ですが、政治や世の中の動き、いま話題の事柄を鋭く、時に風刺の効いた、心温まる筆致で描きます。故事来歴などのうんちくも豊富。文章に親しみ、物事を考えるヒントにもなる。それが「東西南北」です。

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