「タイガースファン、めっちゃありがとう」

阪神・メッセンジャーの日本への旅



 10月になった。まだ強い日差しが甲子園球場に照りつけていて辟易(へきえき)するが、ひとまず(レギュラーシーズンとしては)プロ野球の夏が終わった。

 半月前、私の担当する阪神タイガースは、3位広島とのゲーム差が4・5あり、クライマックスシリーズ(CS)進出の可能性が消えるのも時間の問題だと思っていた。

 けれど、なかなか終わらない。負けたと思っても、広島も調子を落としていて差が広がらない。絶望的だった状況からはい上がってしまった。

 安定感抜群の救援陣に支えられた6連勝。どうやっても打てなかった打線も、執念を見せて得点をもぎ取る。

 9月下旬は、何か大きなものに巻き込まれているようで、あっという間だった。

 そんな中で一人の選手が引退した。阪神で98勝を挙げたランディ・メッセンジャー。10年間の長きにわたる日本への旅だった。

 9月29日、最後の登板を終えた。引退セレモニーでメッセンジャーは「日本での10年間は本当に素晴らしく、一生忘れることはない」と言った。

 「日本での野球生活は、私と家族にとって傑出した旅となった」。そして日本語で「タイガースファン、一番です。めっちゃありがとう」―。

 10年間は球団によると、阪神の外国人では最も長く、引退会見や引退試合をしたのも初めてという。

 いくら38歳を迎えたと言っても、今季も開幕投手に選ばれたメッセンジャーが引退する立場になるとは思わなかった。

 外国人登録を外れ、日本人選手登録となったばかり。

 全盛期の、198センチの長身から投げ下ろす剛速球はなくなったにしても、制球力と打たせて取るスタイルであと何年かは通用するのではないかと思っていた。

 9月中旬、2軍の練習試合で振るわなかった翌日、引退が発表された。

 「自分の体、腕が潮時だと言っているので、今がそのときかなと思い決断した」

 「限界がきていると体が言っている」。引退会見ではっとさせられたのは、10年間で最もいい思い出として「巨人との戦い」を挙げていたことだ。

 「やっぱり最高の思い出は2014年。タイガースとジャイアンツというこれだけ伝統のあるチーム、ライバルと言われているチームと戦って、その相手に東京ドームで4連勝したあのクライマックスシリーズ。印象に残っているし、ライバルのジャイアンツを相手に好投できた日、特にそれが甲子園でできた日は最高の瞬間として覚えている」

 さらに、気持ちの高ぶりを覚えた対戦打者として、巨人の坂本勇人の名前を挙げていた。

 監督や往年のファンも巨人との「ライバル関係」を強調する。けれど、若い選手たちはそんなに意識していないようだ。

 「あまり意識はないかもしれないが、相手が巨人というのは?」という質問が飛ぶけれど、「いやあ…。ファンの方々も、ジャイアンツに勝つとうれしいと思うので…」。おそらく、5チームある相手の中の1チームとしか思っていない。

 それを外国人選手が思い入れたっぷりに語った。それも、メッセンジャーの言う「自分自身の心を開いて、新しい文化を尊敬しながら受け入れていくということが大事」という信念のもとに生まれた意識だったのかもしれない。

 苦楽をともにし、最後の登板で花束を贈った鳥谷敬のことを、日本語で「同級生」と言った。

 日本のラーメンを好み、日本のファンに愛されたメッセンジャー。「10年間守り抜いた甲子園のマウンドはどういう場所だったか」と問われると、涙をこらえながら30秒以上、言葉を発することができなかった。フー、と大きく息を吐いて、それから「means a lot(とても意味のある場所だった)」と短く答えた。

 メッセンジャーは母国に戻り、鳥谷も縦じまのユニホームを脱ぐ。阪神の一時代は終わるのかもしれない。

 去りゆく功労者のためにと、最後は選手が奮起してCS進出を勝ち取ったのかもしれない。

 プロ野球担当2年目。若輩者の私にはまだ、深く語ることはできない。

 静かにボーナスステージを見守り、正確な試合結果を伝えていきたいと思う。

福井 南都子(ふくい・なつこ)プロフィル

2016年共同通信入社。千葉支局、東京本社運動部を経て、2017年12月からは大阪運動部でプロ野球を取材。オリックス担当を1年、阪神担当を1年。中学から大学まで卓球部。静岡県出身。

2019年10月2日

スポーツリレーコラム

共同通信記者たちが見たスポーツ界の裏側をお見せします。

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