日本で一番海にいたサラリーマンの観戦記

セーリングで五輪代表内定ラッシュ



 「おい、実際のところ誰が代表になるんだ?」「いやほんとに分からないんです…!」というやり取りをデスクと何度したのか。厳しい暑さの夏だった。

 皆さんはどんな夏を過ごしましたか? 私はおそらく日本で一番海にいたサラリーマンでした。といっても、残念ながらレジャーではない。8月はセーリングの東京五輪代表内定ラッシュだったのだ。

 8月末のワールドカップ江の島大会で470級の五輪男子代表が決まったが、この1枠の代表の座を巡る争いが、まあ面白かった。

 役者は波、風を読む天才、岡田奎樹(トヨタ自動車東日本)外薗潤平(JR九州)組、スポンサーなしから雑草魂ではい上がった市野直毅(島精機製作所)長谷川孝(横浜ゴムMBジャパン)組、安定感&実績抜群の磯崎哲也、高柳彬組(エス・ピー・ネットワーク)、幼少期より周囲の憧れの的だった土居一斗、木村直矢組(アビーム)ら、誰が代表になってもおかしくない面々がそろった。

 最大3大会の結果で代表を決めるところ、4月の1大会目が終わったところで市野、長谷川組が選考ポイントで一歩リード。2大会目の8月上旬の世界選手権で3位以内に入れば一発内定のところを、メダルレース(最終の決勝レース)に唯一進んだ岡田、外薗組がまさかのフライングで失格となり、9位で終えた。

 

 見つめ合うと~すなおに~おしゃーべり~できーなーいー♪…なんて、藤沢から江の島までチャリ通をキメていた記者も悠長に海風を感じていられないほど、最終決戦のワールドカップを前に、20ポイント内に上記4組が入る混戦となった。

 ワールドカップではメダルレースには行かなかった岡田、外薗組が手堅いレース展開を見せて選考ポイント首位で五輪代表内定をほぼ手中に。それでも、船のトラブルがありながらも最後まで粘り、銅メダルを獲得した土居、木村組には拍手を送りたい。

 土居、木村組の最後のメダルレースがまた堂々たる決勝で、テニスでいえばフェデラー、ナダルにあたるペアとしのぎを削り、ゴールした瞬間二人とも男泣きのいいレースだった。

 世界選手権後、そして厳しい暑さで疲労もいっぱいの中、素晴らしいレースだったと思う。

 「おう、そんなバチバチの代表争いじゃ、さぞ現場もピリピリしてたろ?」…いやいや、とんでもない。もちろん、レース前や競技中は各チーム勝負に向けて準備や調整にまったくの余念がなかった。

 ただ海を離れれば、全員地獄の座間味合宿(朝はとにかく走り込み、昼はビル3階分の波に太刀打ちしながらレースをし、夜またひたすら筋トレして海上ルールを勉強する、すさまじい合宿)を乗り越えた仲間とあって「誰がライバルということではなく、自分たちのベストを尽くす」「自分たちがベストを尽くして代表になれなければ、それまでのこと」と互いを認め合い、健闘し、そして大会が終わればともに酒場へ繰り出す姿もあったのだ。

門馬 佐和子(もんま・さわこ)プロフィル

2016年共同通信入社。神戸支局、本社運動部を経て17年9月から名古屋運動部。プロ野球中日、冬季競技などを主に担当。生まれも育ちも千葉県木更津の海。

2019年9月18日

スポーツリレーコラム

共同通信記者たちが見たスポーツ界の裏側をお見せします。

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