【Gateインパクト】大分県盲人協会を訪ねて

点字器(銀色、2行用)は、木製の板の上に固定して使う。点筆と呼ばれる錐のような器具で点を刻んでいく。携帯できるタイプ(赤紫色、6行用)もある

 先日、取材で大分県盲人協会を訪ねた。

 せっかくなので―と、事務局で「点字器」を見せてもらった。選挙の投票所などにも置かれているという銀色の器具だ。

 点字は6個の点の組み合わせで文字を表す。点字器は、紙に等間隔で点を刻むための定規のような器具で、一文字分の四角い升の中に6個のくぼみがある。この上に厚手の紙を置き、点筆と呼ばれる錐のような器具でくぼみの部分を押し込むと文字ができあがる。手に取ると想像以上に重い。
 一方で、普段持ち歩くのはプラスチック製の携帯型が主流だという。手のひらに収まるほどの大きさで、必要な時に取り出して使うそうだ。小さな道具だが、その中に文字を書き、情報を伝え、社会とつながるための工夫が詰まっているように感じた。

 点字にはひらがなやアルファベット、数字があるが漢字はない。一般の書籍を点字化するには1年近い時間がかかることもあり、冊数にすると元の3倍近くになるという。

 読むのも簡単ではない。指先で点の並びを追うのだが、私にはどこからどこまでが1文字なのかさえ分からない。ほんのわずかな違いを感じ取りながら文章を読み進める。さらに驚いたのは、書くときは紙の裏側から点を押し出し、読むときは表側の膨らみを読むため、文字は左右が逆になることだ。想像していた以上に高度な技術だった。

 事務局長の後藤礼次郎さんによると、生まれつき、あるいは幼い頃から視覚障害がある人でなければ、点字を自在に読みこなすのは難しいという。

 協会の2階には点字図書の書庫がある。5679タイトル、2万769冊。さらに音訳図書も6634タイトル、CD6649枚が所蔵されている(2024年3月時点)。これらを支えているのは、93人の点訳ボランティアと142人の音訳ボランティアだ(2022年4月時点)。気の遠くなるような作業量である。

 書庫には毎日新聞社が発行する日本唯一の週刊点字新聞「点字毎日」もあった。視覚障害者の生活や福祉、文化に関する情報を伝える貴重な媒体だという。点字を印刷する専用機器は数百万円するものも多く、運営は寄付や協賛金に支えられているそうだ。

 視力を失うことは、私たちにとって大きな恐怖だ。生まれてから当たり前のように見てきた光を失った世界で生きることを、私はうまく想像できない。

 だが、その日出会った人たちは実に明るく、穏やかだった。その一方で、書庫に並ぶ膨大な点字図書や、支える人たちの地道な作業に触れると、そこには見えない努力の積み重ねがあることを思い知らされる。

 私たちの日常は、「見ること」が当たり前であることを前提に成り立っている。駅の案内板も、スマートフォンも、本も新聞もそうだ。その社会の中で、自分らしく暮らし、学び、働こうとする視覚障害者たちがいる。そのために多くの人が時間を費やし、技術を磨き、支え合っている。

 光のない中で幸せに生きようとする人たち。その挑戦を支える現場は静かで優しい空間だった。しかし私には、そこが見えない困難と日々向き合う最前線、まるで戦場のようにも感じられた。
 (衛藤知愛)

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