黒く焼け焦げた幹から、淡い紅色の花がこぼれ落ちるように咲いた。
大分市佐賀関の田中運動公園のサクラが、大火と冬の寒さを乗り越え、被災地に春を告げている。
田中地区では昨年11月18日に発生した大規模火災の傷痕が今も生々しく残る。住宅を焼いた火は、運動公園の周りに植えられたサクラにも燃え移った。幹が大きく損傷し、痛々しい姿になった木もあるものの、焼け残った数本の枝先には力強い生命が宿る。
焦げた枝から咲く「不屈のサクラ」は、困難に立ち向かう住民の姿とも重なる。自宅が全焼した岩川正行さん(81)は「今年も咲いてくれたか」と、感慨を込めてサクラを見上げる。
景色が一変した被災地で、変わらず咲くサクラ。復興への確かな足音として、人々の心に静かに響いている。