高校弓道の2大タイトルの一つ「全国選抜大会」が23~25日、静岡県で開かれた。団体は大分県予選を制した男女各1校、個人は2位までが大舞台に立った。結果は本紙の基準では「記録のみ掲載」となる入賞なし。ただ、元競技者の筆者から見ても、あまりにも惜しい内容だったので、ここで紹介したい。
初日にあった男子個人は、まれに見る激戦。その中で県予選1位の森蒼生(国東)が踏ん張った。予選、準決勝とボーダーラインの4矢3中で突破すると、決勝は総勢30人による競射(各自1本ずつ引いて、外せば敗退のサドンデス方式)に突入した。
ちなみに弓道は、的のどこに矢が刺さっても1中となり、「中る」と書いて「あたる」と読む。「当たる」と意味は同じだが、漢字を間違うと、関係者界隈では「おいおい、分かってねーな」となる。注意が必要だ。
森は見事に4本目まで中て続けた。例年なら入賞決定でもおかしくない。ただ今回はまだ12人も残っていた。そしてここから、直径1尺2寸(36センチ)の的が8寸(約24センチ)の小的に変わる。森は5本目で惜しくも外し、中ったのは3人だけだった。
その後、4~8位決定戦に突入した。5本目を抜いた(外した)森を含む9人が近寄せ(より的の中心を射抜いた選手が上位)の勝負に入った。森は2人目。最高で「全国4位」が狙える「極限の一本」は、的を捉えることができなかった。結果だけで見れば順位もつかない。ただこの場に立ち、ここまで進んだ経験は、何にも代え難い。
女子は団体の杵築が見せ場をつくった。この大会は3人立ちで、各自が4本を引いて計12射の的中を競う。予選突破のボーダーラインは例年、6~7中。そんな中、杵築の予選は6中だった。
大会前に取材で杵築高校を訪ねた折、写真撮影と同時に「本番さながらに引いてほしい」とオーダーした。さぞ緊張感を持ってバンバン中ててくれるだろうと期待したところ、まさかの「2中」。思わずひっくり返りそうになった。直前に修学旅行でブランクがあったことを差し引いたとしても、少し心配になったものだ。
そんな彼女たちが緊張の予選で6中を出し、安堵(あんど)したのもつかの間、14チームが6中で並び、決勝トーナメント進出を懸けた競射に突入した。上がれるのは8校。1本ずつ計3本引き、2中、1中、1中と食い下がったが、最後の椅子を懸けた京都との一戦を1―2で落とした。
先に2本的中され、敗北が決まった中でも落ち(3番目の射手)が一矢報いた。杵築の女子は学校史上初の出場だったが、確かな足跡を残した。
「記録」ではなく、「記憶」に残る好勝負を展開した選手たちの健闘を心からたたえたい。
(首藤福功)