【ホーバー乗船記】コンビナートや街並み…景色満喫 航路の復活「本当に良かった」

大分空港に着いたホーバークラフト=20日

 大分市と大分空港を海路でつなぐホーバークラフトの定期運航が7月26日に始まる。その日が目前に迫った20日朝、私は大分市駄原(西大分)のホーバーターミナルおおいた(通称ホボッタ)にいた。報道機関向けの乗船会だ。
 訓練中の事故など困難を乗り越えての運航開始は、昔からのホーバーファンとして感無量この上ない。これから乗船するホーバークラフトは3台あるうちの2番船「Banri(バンリ)」。海に向かうスロープの前にデーンと座る雄姿と、対岸に停泊する「さんふらわあ」のビジュアルなコラボレーションが美しい。写真に収めた。

■「エアライナー」と陸海で並走
 Banriに乗り込み、午前7時半ごろ出港した。かぶりつきで景色を楽しむなら当然、窓側の席が良いのだが、とにかく大きな窓が左右に計8枚あるため、中央の列に座っても景色が見やすい設計だ。
 大分市から大分空港に向かうコースだと右側にはコンビナートが現れる。鉄骨やパイプが複雑に入り組んだ構造物、煙突、タンクが見える。巨大な4基のクレーンは、映画スターウォーズに出てくる帝国軍の巨大兵器「スノーウオーカー」のようなシルエットで、今にも海に向かって進撃してきそうな迫力がある。
 一方、左側の座席からは別府市の街や山々、そこから国東市へと続く風景が見える。陸路では、空港のすぐそばまで近づいた目印になる赤い橋が、海側から視界に入った。午前7時58分ごろ、本当にたまたまだが、大分空港に向かうバス「エアライナー」がその橋を走行中で、並走する陸海アクセス便の二重奏となった。どちらも飛行機の出発に間に合うようにしているため、同じシーンはちょくちょくあるのかもしれない。

■しぶき舞い小さな虹にプチ感激
 ホーバークラフトは船体下部に大量の空気を噴出し、自らを浮かせて走る。その空気によって霧状のしぶきが舞い上がる。この日の海上は晴れていて、太陽光がしぶきに当たり、船体横に小さな虹が架かっているのが窓から見えた。「虹とともに空港に向かうとは、なんてすてきな乗り物なのだろう」。プチ感激を味わった。
 座席のポケットにはホーバークラフトの構造や仕組みの解説書が差し込まれていた。「ほうほう。船体はアルミニウム合金か。このすごいパワーはディーゼルエンジンが生み出しているのだな。なるほど」。ごく短時間で読めるので、出航前に見ておくと良いだろう。航行中は船酔いする恐れがあるので、やめておいた方が良いかもしれない。
 船内のモニターでは、ライフジャケット着用時の説明に加え、高崎山、別府の温泉、真玉海岸、原尻の滝など県内の観光名所を紹介する動画が流れていた。

■爽快感とアトラクション感
 大分空港には午前8時5分ごろ到着した。気軽に快適な船旅を味わえる。交通機関としてホーバークラフトの定期航路があるのは大分県だけだ。
 運航会社の大分第一ホーバードライブの小田典史社長は「大分市と大分空港の近さを感じてもらえると思う。パッと乗れて利用できる地域交通を目指したい」と話す。
 その話に共感した。加えて、海面を走るような爽快感、アトラクション感があり、あっという間に着く感じもある。ホーバークラフトでコンビナートや街並みを海から眺めるという新しい体験ができて、とても楽しかった。

■09年の運航終了…寂しい日
 振り返れば2009年10月31日に、旧ホーバークラフトが定期運航を終えた。私は「さよならホーバー」の記事が仕上がるのを会社内で見届けた。とても寂しい日だった。
 船体は海外に譲渡されたが、その後どうなったのかが分からず、ずっと行方を追っていた。2013年1月、熊本県の八代港にそれらしき物があるという情報提供を受け、すぐに現地に向かった。そこには大部分が焼けただれたり、ひどくさび付いたりした、まぎれもない大分のホーバークラフト3台が置かれていた。
 あまりの無残さに泣けてきた記憶がよみがえる。それだけに「この航路が復活して本当に良かった」と、しみじみ思う。
 (下川宏樹)

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