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没後10年 岩澤重夫の画業振り返る

長男で現代美術家有径氏が寄稿

 日田市出身の日本画家で文化功労者の岩澤重夫(1927~2009年)の没後10年を記念し、その画業を振り返る県立美術館のコレクション展「没後10年 岩澤重夫に捧ぐ―自然との対話」が5日から同館で開かれる。開催を前に、岩澤の長男で現代美術家の有(あり)径(みち)氏(京都府)に同展への思いを寄せてもらった。

 私の父、岩澤重夫は、1927(昭和2)年に米穀商を営む商店の長男として日田市豆田町に生まれました。幼少の頃は、近くの花月川で魚釣りをしてから小学校に行くほど水辺が好きな少年でした。18歳の時にようやく終戦を迎え、その後、京都の美術学校に入学しました。
 卒業後は、欧州から帰国され日本画の世界に新風を吹き込まれていた京都画壇の巨匠・堂本印象氏(1891~1975年)に入門しました。奇抜なスタイルで有名な堂本印象美術館の開館準備には一門総出でお手伝いに参上し、素晴らしい経験をした、と語ってくれました。
 師匠がご健在の時は、抽象画と具象画の両方の研さんを積む経験をすることができ、堂本氏の生み出す独特の世界観に傾倒していました。師匠から教わったことが、その後の人生の大きな宝物となった―と、精力的に制作を続けました。
 75年に堂本氏が永眠されてからは、師匠の功績を見習い、全国各地の緞(どん)帳(ちょう)原画やふすま絵、陶板画などを制作する経験を積み、次第に規模の大きな作品を制作することに姿勢が変化しました。
 また、県出身の先輩、福田平八郎氏、髙山辰雄氏の人間像に視点を移し、懸命に両氏の画法を分析してきた時間がありました。できる限り色を統一し、画面をモノトーンに近づけていく作法や、全てをそぎ落としシンプルな完成を目指す両氏の技法は、それまでに自身が学んできた日本画の世界に調和し、新たな複合点を発見させたものと理解できます。
 今回出品される初期作品の静岡県中田島砂丘を取材した「砂丘」(63年)、由布岳を取材した「晨(しん)」(73年)は、いずれも堂本氏の指導の元で制作された作品です。
 そしてその後、大分の先駆者から学んだ時間に制作した和歌山県太地町を取材した「凪(なぎ)」(78年)、久住高原を取材した「冬陽」(84年)、宮城県の松島を取材した「浜の朝」(2005年)は、いずれも色彩を限定し画面全体に特別な統一感の漂う作品です。
 そして中津市の山国川を取材した「天響水心」(1990年)は、63歳にして恐怖を感じるほど力強い大自然を見つめる純粋なまなざしを日本画の世界に進展させたもので、作家人生でもっとも制作力のある時期に描いた最高傑作です。
 その後は、緑の山に白い滝を描くスタイルを確立させ、ようやく画壇の人気作家の仲間入りを果たすことができました。
 改めてこれまでの仕事を振り返ると、全て唯一無二の自然観と自身の培った魚釣りの経験から生まれる時間軸を描写に積み重ねた精神性を感じます。今回のコレクション展は、自分が画家になることを認めてくれなかった厳格な父親と、優しく見守ってくれた母親の眠る故郷大分への感情あふれるまなざしとともに、福田氏、髙山氏に続く大分の美術史に名を残すことを目標としていた父の夢がようやくかなった瞬間なのかもしれません。

 × × × 

 いわさわ・ありみち 1958年、京都府生まれ。

 ▽コレクション展「没後10年 岩澤重夫に捧ぐ―自然との対話」は、6月4日まで。観覧料は一般300円、大学生・高校生200円。
※この記事は、4月2日大分合同新聞夕刊4ページに掲載されています。

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