202567日()

【講演会場見聞録】世界を舞台に活躍する!未来の切り拓き方

講演する廣津留すみれさん
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  • 講演を聞く参加者

 大分市出身のバイオリニスト・廣津留すみれさんが「世界を舞台に活躍する!未来の切り拓き方」をテーマに講演した。大分県教育委員会が10月に大分市で開いた中学・高校生らを対象にした留学フェアの一環イベント。
 廣津留さんは1993年生まれ。県立大分上野丘高校の出身。独学で世界有数の名門校、米ハーバード大学に合格した。大学卒業後は米ジュリアード音楽院に進学し、修士課程を修了。現在は音楽活動のほか、国際教養大学特任准教授(秋田市)、成蹊大学客員講師(東京都)やテレビのコメンテーターとしても活躍している。要旨は次の通り。
 
■きっかけはバイオリン

 ハーバード進学を目指したきっかけは、幼少期から続けていたバイオリンだった。小学3年の時、腕試しに出場した初めてのコンクールで自分の実力を知り、続けることに自信が生まれた。高校1年で初めてパスポートをつくり、イタリアのコンクールに出場。そこでグランプリを受賞したことで、翌年の全米ツアーに参加する機会を得た。全米ツアーでは、言葉の違う海外の人々と音楽を通じて交流する楽しさを知った。音楽は世界の共通言語であると実感した。
 アメリカ滞在中に足を延ばして、ハーバードを見学した。特別な存在だと思っていた在学生は話を聞いてみると普通の若者。学業だけでなくスポーツや課外活動でも充実した時間を過ごしていた。「ここなら好きなバイオリンと学業を両立させられそうだ」。日本に戻り、受験しようと決意した。

■自力でゼロから情報収集

 とはいえ、地方の公立高校から目指すのは苦労が多かった。前例がないので経験者に聞くこともできない。先生を説得し、自力でゼロから情報収集を始めた。幸いオンラインで大抵の情報が手に入る時代。英語で検索し、必要な情報を集めた。
 母の影響で幼少期から英語に親しんでいたが、留学試験対策の最大のハードルは英単語だった。各教科で出てくる専門用語を英語で覚えなおす必要があった。並大抵の数ではない英単語を暗記するため、5分程度の隙間時間も活用した。小論文では自己アピールが求められる。母国語ではない英語で自分のことをアピールするため、推敲(すいこう)を重ねた。
 受験対策は塾に通わずに独学で進めた。合格後の楽しい大学生活を思い描くことでモチベーションを上げた。受験でも部活動でも習い事でも、競争相手は他人ではなく昨日の自分。自分が進化することに集中することが大事だ。人と比べて焦ったり落ち込んだりせず、自分のペースで勉強を進められたのは独学の利点といえる。

■高め合える友人との出会い

 こうして入学したハーバードには1学年に約1600人が在籍。映画「ハリーポッター」に登場する魔法学校「ホグワーツ」を思わせる大講堂や恒例行事、寮生活などがあり、とても楽しかった。各界で活躍する著名な先輩が講義をする機会も多く、世界的なチェリストのヨーヨー・マがふらっと授業に顔を出してくれることもあった。
 世界各国の学生がハーバードで学んでいた。彼らはそれぞれ得意分野や強みを持っており、自分に自信があり、堂々としていた。目標に向かって努力を惜しまない彼らの姿勢に、とても刺激を受けた。
 努力している者同士は互いに敬意が生まれる。クラスの仲間に良いことがあれば皆で心から祝福するので、クラスの雰囲気は健全でポジティブだった。このように、高め合える友人と出会い、一緒に学んだことはとても有益だった。
 こうして友情を育んだ同級生のネットワークが世界中に広がっているのも留学の利点。各国に専門分野で活躍する同級生がいて、いつでも知恵を借りられるのは一生の財産だ。
 ハーバードの学生はタイム・マネジメント力に優れていて、効率的に時間を使っていた。自分も学業とバイオリンを両立しながら、友人との交流も楽しむため、スケジュール管理アプリ「グーグルカレンダー」で、パズルゲームの「テトリス」のように毎日の予定を組んで時間を管理していた。優先順位をつけて物事に取り組むことで、限界を超えて、何倍もの成果を上げられることが分かった。
 留学を通じて、自分の意見を伝えることの大切さも学んだ。日本では自己主張すると敬遠されがちだが、アメリカでは授業で発言しない人は存在しないに等しい。さらにクリティカル・シンキング(批判的思考)で、建設的な反対意見を述べるスキルも身に付いた。

■視野も人脈も広がる留学

 目標を達成する手段は、大学合格でもグラミー賞受賞でもエベレスト登頂でも同じだ。やるべきことを考え、細分化し、期限付きのToDoリストにして毎日実行する。そして、節目節目で到達度を確認する。それを繰り返すことで目標はかなえられる。
 基本的なコミュニケーションのマナーは、今のうちに身につけておきたい。初対面の相手には自分から名前を名乗り、会話するときは笑顔で相手の目を見て話すように心がけよう。相手を名前で呼ぶことは信頼関係を築くのに役立つ。
 これからの時代、良い大学が良い職業につながるとは限らない。肩書に頼らず、セルフ・ブランディングと差別化が重要になる。そのためには周囲の意見に流されず、自分が本当にやりたいことをやるべきだ。大分や日本という小さな枠で考えるのではなく、世界に目を向けて行動してほしい。
 私はバイオリンが好きだったので、とにかく努力した。そして海外に出ることで、自分の強みや弱み、やりたいことを発見できた。それが今の仕事につながっている。留学は視野も人脈も広がる。失敗してもいいので、他人と比べることなく、自分の強みを磨いて好きなことに挑戦してほしい。

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