2025514日()

【高校生・大学生の就職戦線を探る】④ 大分県内の勤務地を希望する高校生

 2023年3月に卒業した高校生の就職戦線は、人手不足を背景に、大分県内でも求人数が就職希望者数を大幅に上回る「売り手市場」となった。高校には県内外の企業から求人票が続々と届いているが、生徒の多くが自宅から通える県内の勤務地を希望しているという。

■有名企業でも受験生なし
 「もったいないと思うような有名な企業からも求人が来るが、生徒が集まらない」。鶴崎工業高(大分市)の進路指導主任、丸山好成教諭(60)は「売り手市場」の状況を説明する。
 鶴崎工業高の2023年3月の卒業生は230人。このうち7割を超える172人が就職した。公務員と自営業を除くと160人。この8割に当たる128人が県内が勤務地となる企業への就職を決めた。
 3年ほど前から、同校に寄せられる求人数は毎年数百件ずつ増えている。2023年3月は卒業生に対して2617人の求人があった。内訳は県内が706人、県外が1911人。だが、多くの生徒が県内企業への就職を望み、国内の有名企業であっても、受験する生徒がいないこともある。丸山教諭は「家から出たくない。家族も友達もいる慣れた環境で過ごしたいと考える生徒が多い」と話す。

■保護者も「自宅から」
 三重総合高(豊後大野市)も同じ状況にある。2023年3月は卒業生109人のうち約3割が就職した。業種は販売や製造がメイン。進路指導主任の中浦智文教諭(59)は「どの企業も人手を欲しがっている。就職先は潤沢にある」と説明する。
 三重総合高に求人の案内を寄せた企業は県内だけで420社、県外は700社以上あった。35人ほどの就職希望者がこの中から1社を選ぶことになるため、数字の上では「選び放題」の状況だ。
 ただ、生徒のほとんどは自宅から通える県内の勤務地を希望する。保護者も自宅から通わせたいというニーズが強い。中浦教諭は「親も子も近くにいて安心したいようだ。昔のように『早く家を出て自由になりたい』と考える生徒は少ない」と話す。
 中浦教諭が懸念するのは、生徒が知っている数少ない企業の中から進む道を決めようとしている点だ。高校生は世の中にどんな企業や業種があるのか詳しく知る機会が少なく、中学校の職場体験で得たイメージやインターネットで検索してヒットした企業を基に選ぶ生徒が多い。「知っている先輩がいる」など居心地が良さそうな会社を好む傾向も強い。
 「大企業に就職するというより、『これくらいが自分に合っている』という感覚が強いようだ。失敗したくないという気持ちがあるのでは」と中浦教諭。高校生が実際に企業活動の様子を見たり体験したりする機会をもっと増やす必要性があると感じている。

■内定率、この10年間は99%台
 大分労働局によると、2023年3月に県内の高校を卒業した生徒の就職内定率は99.8%。この10年間は99%台が続いている。
 県内企業の求人数を就職希望者で割って算出した求人倍率は2.42倍となり、この10年間で最高。大分労働局が取り扱った4674人の求人に対し、大分県内の高校生1931人が就職を希望する状況だった。
 (年齢は記事公開時)

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