「マリフアナはかっこいい」「健康に悪影響がないらしい」――。
こうした理由で、大麻に手を染める若者が後を絶たない。大分県警が大麻取締法違反などの疑いで摘発した人は過去5年間(2021~25年)で239人に上る。大半は10~20代の若者たちで、いっときの多幸感と引き換えに夢や未来を失った人もいる。「やめられず、つらかった」。乱用を繰り返してきた一人の男性が8日、違法薬物の恐ろしさを語った。
「別の世界に行けるような気がした」。薬物依存症患者の回復を支援している大分市府内町のNPO法人「大分ダルク」の事務所で、Aさん(29)が大麻に手を出した経緯を明かした。
大学進学を目指し、予備校に通い始めた18歳の春。道沿いのカフェで働く40歳くらいの男性と、あいさつをするうちに仲良くなった。レゲエ音楽に詳しい人で洋楽やファッションの趣味が合うことから、付き合いが深まった。
「いいスピーカーがある。見に来ないか」。ある日、男性の自宅マンションに招かれた。部屋でくつろいでいると、男性はおもむろに冷蔵庫から何かを取り出し、Aさんに見せながら、パイプで吸うジェスチャーをした。
「あるよ。やる?」
大麻だった。「吸ったことある?」と聞かれ、Aさんは心の中でうろたえた。もちろん違法だと分かっている。だが、海外のミュージシャンの影響で「マリフアナを吸うやつはかっこいい」と、どこか憧れのような気持ちを抱いていた。
「あります」とうそをつき、その場で吸引した。初めての違法薬物。不安で恐ろしくなった。誰かにばれるのではないかと思うと、落ち着かない。それでも、毎週日曜になると、男性のマンションに通った。
「1年間、大麻をやり続けた」。楽しく、幸せな気分になる瞬間に依存し、気付いたら逃れられなくなった。
合成麻薬、コカイン、覚醒剤……。次々と依存性の強いクスリに手を染めていった。親の金を盗み、周りの人間を裏切り、傷つけた。22歳のとき「大麻を持っているから来てくれ」と自ら110番をして、警察に現行犯逮捕された。
精神科病院の閉鎖病棟に入院し、更生施設に入ったが、スタッフとトラブルを起こして退所し、また違法薬物に走った。嫌気がさして宗教団体を頼ったこともある。気が付けば、10年間にわたって乱用を繰り返していた。
もともと不良だったわけではない。中学時代は学業の成績も良く、高校は進学校だった。得意科目は英語。語学力を生かした仕事に就いて、世界とつながるのが青春時代の夢だった。
クスリで得られた多幸感の先に待っているのは、つらくて苦しい、自分を見失った日々だった。今年2月8日、誘惑を絶つため、古里から遠く離れた「大分ダルク」の施設に入所した。
今は薬物依存と闘う多くの仲間がいる。前を向いて生きるメンバーと笑い合い、スポーツをする日々が楽しいという。「みんなを裏切りたくない」という思いが、自分を支えている。
「一度でも脳が薬物を記憶したら、二度としらふで生きることは難しい」と言われる中、毎日のミーティングでクスリに手を出していないことを確認し合う。そんな日々が7カ月過ぎた。
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国の資料によると、大麻はアサ科の植物で、主成分は高揚感、眠気、幻覚などの作用を引き起こす。インターネット上には「健康に害がない」との誤った情報があるが、運動能力や認知機能の低下をもたらす。うつ病など精神疾患の発症につながる恐れもある。特に、成長期に当たる10代の脳は影響を受けやすいとされる。
県警によると、過去5年間に摘発された239人のうち、20代は139人で58%を占めた。年代別は多い順に▽30代 43人▽10代、40代 各26人▽50代以上 5人―と続く。取り調べに対して、摘発された人たちは「興味本位だった」「使ってみたかった」などと供述したという。
注射器を使う覚醒剤などと異なり、大麻は乾燥片をパイプで吸ったり、クッキーやオイルで取り入れたりできるため、罪悪感を感じにくい―との指摘もある。近年、入手方法として交流サイト(SNS)が増えている。「野菜」「クサ」といった隠語で取引されているという。
県警組織犯罪対策課の庄司康宏次席は「健康被害がないといった誤った認識を持たないでほしい。安易に手を出すと自分の将来が狂うことになる。誘いがあっても断る勇気を持ってもらいたい」と話した。(羽山草平)