【Gateインパクト】虎の書斎(1) 本棚と進化論

 父が大切にしていた桜の木を切ったことを正直に白状したジョージ・ワシントンは、自ら告げた勇気を父に褒められ、怒られることはなかった。そして大人になって、アメリカの初代大統領に選ばれた。「みんなも正直に生きるのですよ」。小学校で先生が教えてくれた。3年生くらいの時だったと思う。

その話に感銘を受けて、すぐにジョージ・ワシントンの伝記を買いに行った。大分市鶴崎の国道197号沿いにあった書店「イーヌマ」の支店だ。店舗の幅が狭く、店は細長くて奥行きのある造りだったのを思い出す。

店内に入ると、左側にある本棚の一番上の段が伝記コーナーだった。当時の私の身長は120センチから125センチといったところか。早生まれのため、同じ学年でも小さい方だった。

そうした事情で、本を手にしたくても届かないのだ。背伸びしても、あと少し届かない。悔しい。店員にお願いして本を取ってもらった。

ジョージ・ワシントンをきっかけに、伝記に夢中になった。ニュートン、一休、コロンブス、キュリー夫人、野口英世、ライト兄弟、エジソン、ヘレンケラーなどなど。挙げれば切りがない。世界の偉人の話をたくさん読んだ。

イーヌマに行くたびに店員に本を取ってもらっていたが、いつも「本を自分で取りたい。届け、届け」と思っていた。いや「念じていた」と言った方が近いかもしれない。この当時の最大の目標は「イーヌマの本棚最上段に手を届かせること」だったのだ。

ある日、その願望が通じた。ついに手が届いたのだ。感激したことを覚えている。

だいぶ後になってからだが、ダーウィンの「進化論」を知った。大ざっぱに言えば「生物はその環境に適応していくために進化を遂げる」という理論だ。「本棚最上段に手が届いたのは、進化論に違いない」と思うようになった。そして機会があるたびに、周囲の人たちに「本棚と進化論」の話をしている。

しかし、大半の人たちの反応はこうだ。「成長して背が伸びただけやろ」。つまらんなぁ。

還暦間近の私の身長は176センチ。まあまあデカい部類じゃないだろうか。

(虎)

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