窓の外で雨が降っている。今日は平日だが休校だ。外に出なくて良い。だから、外に出ることさえしなければ、横なぐりの雨も、荒れ狂う風も、鳴り響く雷でさえ他人ごとだ。そう、思っていた。
「おかけになった番号は……。」
翌日、親友と連絡が取れなくなった。雨はより一層勢いを強めている。きっとこの雨のせいだ。ラインの既読もつかないし、電話だって繋がらない。他の友達も、その子と連絡がつかず、クラスのグループラインで騒ぎ始めた。
焦って、二階からリビングにいる母に大声で聞いた。母も連絡がつかないという。心の中で黒いモヤが広がっていく。その瞬間、母が見ていたニュースに速報が入った。親友の家が、完全に水没していた。
サァッと血の気が引いたのは自分でも分かった。と同時に、黒いモヤが全身を一瞬で駆け抜けた。手足がカタカタと震える。母も画面を見て固まっていた。静まりかえった部屋に、ニュースの音声と雨の音が響いている。そして、その音は徐々に小さくなって消え、それと同時に記憶もプツンと消えた。
どのくらいたっただろう。部屋はカーテンが閉まっていて、薄暗い。窓の外では、雨が降っていて、とても時間が進んでいるとは思えない。私はリビングのソファーで寝ていた。隣のテーブルの上には私のスマホと一枚の置き手紙が置いてあった。立ち上がってパチンと電気をつけ、その手紙に目を落とした。
「○○ちゃんはさっき救助されたって。ウチが無事で安全だからしばらく○○ちゃん一家はウチで過ごします。今から、避難所に迎えに行ってくるね。家でお留守番しててね。母より」
母からだった。読み終えて、ふと、母も流されたらどうしよう、と変に汗をかいたが、それも杞憂に終わった。玄関の扉が開き、皆が安堵の表情を見せたからだ。私はすぐさまみんなに抱きついた。雨で濡れているなんて、関係なかった。
親友が風呂から上がって、リビングでゆっくりしていると、スマホがピロンッと鳴った。見ると、クラスラインの通知が七十八まで膨れ上がっていて、皆口々に呟いていた。
「明日も休校かなー?」
「えー、休校がいい~。」
「それな! 雨もっと降れー。」
「やば笑。まあ私も同意だけど~笑。」
休校がいい、もっと雨降れ、雨乞いしよう。そんなノリが、なんだか辛い。親友は、タオルを強く握り、唇を噛んで震えていた。私達の気持ちは置き去りに、会話はどんどん弾んだ。私は見ていられなくて、すっとスマホを下ろした。