裁判は長期化し、事故から5年が過ぎた今も終結していない。
一審大分地裁で裁判員裁判の公判が始まったのは2024年11月5日。危険運転致死罪の成否を巡って検察側と弁護側が全面的に対立、非公開で争点整理が続いたためだ。
検察側の立証を支えた走行実験は、初公判を半年後に控えた5月に実施。裁判の直前まで証拠固めに追われた。
公判の審理は6回にわたり、警察官、プロドライバー、視能検査学者らが出廷して尋問を受けた。判決は11月28日に言い渡された。
二審福岡高裁は25年9月29日に初公判を開いた。検察側は新たな走行実験の結果を用意し、証拠として採用するよう請求したが、高裁は却下。即日結審し、具体的な審理はなかった。4カ月後の今年1月22日、高裁は一審判決を破棄した。
検察側は判例違反を理由として上告した。今後、最高裁が二審判決を維持するか、下級審に差し戻して再度の審理を命じるか―といった判断を下す。
■アルコール濃度の検知も
「時速194キロ」が社会に与えた衝撃は大きく、悪質運転を許さない「市民感覚」と法の適用実態のギャップを浮き彫りにした。捜査機関の判断のぶれもあらわになり、明確な法を求める機運が高まった。
法務省は2024年2月以降、法改正を視野に有識者検討会と法制審議会を開いた。2年がかりの議論の結果、方向性は「数値基準」の新設に決まった。
例えば、最高速度50キロの一般道を100キロ以上で走行するなど一定の速度超過があれば一律に危険運転致死傷罪を適用する―というもの。飲酒運転も、呼気1リットル中0・50ミリグラム以上のアルコール濃度の検知を処罰基準として設けた。
政府は開会中の特別国会に自動車運転処罰法の改正案を提出する。今夏にも成立する見通し。