土地から土地を歩いてつなぐ旅では、大通りからそれた生活道路など、なるべく地元らしさを味わえそうな小道をたどるようにしている。
そうしていると、暮らしのほのぼのしたシーンに接することが時々ある。とても幸せに感じる瞬間だ。
昨秋、佐賀県は唐津市を旅したときの体験をつづりたい。
唐津を代表する「虹ノ松原」の二里を楽しんだ後、私は呼子方面を目指して海岸線沿いを北上していた。夕方、予約していたキャンプ場まで目と鼻の先というところで、ある集落に差しかかった。
路線バスが何とか通れる程度の主要道からそれる形で、1本の小道が延びていた。地元の人しか使わないような、こぢんまりした雰囲気に引かれ、そちらの方に入った。
両サイドに、新旧の家々が並んでいた。これといった特徴は見受けられないものの、静かな空気に心癒やされながら残り道を進んだ。
と、地元のお年寄りがリヤカーに何かを積んでゆっくり歩いているのを見かけた。向こうからは、釣りざおを抱えた自転車の少年2人組。擦れ違いざま、お年寄りが小声で話しかけると、少年たちは足を止めて何かを答えた。
釣った魚の話だろうか。
内容は聞き取れなかったものの、年配者に礼儀正しく接する少年たちを、ほほ笑ましく感じた。
さらに数十メートル進んだ。道ばたの民家のガレージで、1人の中年男性が何かの作業をしていた。たばこをくゆらせ、夕暮れ時の週末をのんびりと楽しまれている様子に、豊かなものを感じた。
程なく、民間のアパートのような建物に通りかかった。敷地の空きスペースで、小学生らしき2人がゴムボールを蹴り合っていた。
太陽はもう山際に隠れかけていた。闇が秋空をどんどんと覆い、薄気味悪ささえ漂う中でも、「そんなの関係ねえ」とばかりに夢中でボールを返し合っていた。
家の外で、暗くなるまで遊ぶ。そういえば自分にもそんな頃があったかなあ。何十年も前の記憶を、久方ぶりにくすぐられた。
わずか200~300メートルに過ぎない単なる生活小道だった。が、そこには豊かな暮らしがあった。のどかさ、つながりがあった。昔の日本ならどこにでも見られたような場面に、期せずして触れさせていただき、こちらまで満たされた。
観光名所とはまた異なる趣と余韻に、その後もしばらく浸った。
(旅師X)