【Gateインパクト】サラリーマン歩き旅・プロローグ

名もない田舎道を歩く。これが楽しい=福岡県

 私は大分合同新聞で記者をしている40代男性だ。学生の頃から、歩いてまちからまちへとつないでいく一筆書きのような旅をしている。20年以上が過ぎた今も、折々に体がうずき、歩いている。振り返ると、このようなスタイルで旅をしている人に出会ったことがほとんどなく、自分の体験をシェアすることも読者サービスの充実につながるのではと思い、道中の出会いや感じたことをつづっていくことにする。

 旅のスタイルはシンプルだ。それまでにたどり着いた土地のどこかをスタート地点にする。そこから3日程度で到達できそうな土地を探し、仮のゴールに据える。道中にあるキャンプ場や宿を押さえる。そして、後は歩くだけ。日中、お天道さまが見下ろしてくれている間は、ひたすら右脚と左脚を交互に前に出す。疲れたら公園のベンチで休む。通り沿いにうまそうなラーメン屋があったら、入ってみる。道ばたにこっそり咲く花や、小川の水面にちょこんと鼻先をつき出す亀さんに、ほっこりする。
 学生時代に暮らしていた関東から、大分までを歩いてつなぎ、それでは中途半端と鹿児島まで南下し、九州縦断したならと今度は大分―長崎を歩き、せっかくなら北へもと、奥州・白河の関に至り…。いろいろと思いつくまま、気の向くままに歩いてきた。一筆書きの旅に終わりはなく、脚が動く限りは列島をつなげていくつもりだ。それから、海の向こうも。
 醍醐味(だいごみ)の一つは、土地の個性を味わえることだ。一歩一歩、脚を前に進めていく中で、少しずつ風景や言葉が変わっていく。山のかたち、集落の屋根瓦の色、スーパーで耳にする雑談から漏れる方言。一歩進んだだけでは分からないけれど、十歩、百歩、千歩と進むにつれ、いろいろなものが変わっていることに気づく。そのどれもに表情があって、暮らしがにじんでいて、こちらの心がほだされる。世の中は均一化が進んでいるというけれど、歩いているとそう感じない。地方って、面白い。素晴らしい。
 記者、会社員、家庭人といった肩書き・枠組みから離れ、一人の人間として歩く。その中で、さまざまな出会いがある。丸腰な姿勢が安心感を呼ぶのか、いろいろな人が声をかけてきてくださる。飲み物をくださったり、車に乗せてくれようとしたり、中には私と一緒に歩きだす方もいらっしゃった。共通しているのは、相手の方も丸腰ということだ。何の肩書きもない裸の人間に対し、肩肘張らずに素の自分に戻れる、ということなのだろうか。こうして出会った人々からいただいた言葉、贈り物、笑顔、その一つ一つに真心があって、私自身の宝物となっている。
 旅のスタイルをざっくり説明したところで、一つ一つのエピソードに触れていくことにしよう。歩いてつなぐ旅が見せてくれる、世の中の味わい深い表情を楽しんでいただけたら幸いだ。(旅師X)

最新記事
【Gateインパクト】サラリーマン歩き旅②見えない境界線
【Gateインパクト】サラリーマン歩き旅①ぬくもり
【Gateインパクト】地球さんご賞受賞作品④「ねっこのパワー! いのちをつなぐしょくぶつたち」中川陽葵(富山県立山町立立山中央小1年)2024年度 田中章義賞
【Gateインパクト】地球さんご賞受賞作品③「当たり前」の未来を目指して 小林律仁(東京都大田区立大森第六中2年)2024年度 川井郁子賞
【Gateインパクト】地球さんご賞受賞作品②奪われたもの 有田茜(福岡県八女学院中2年)2024年度 荻原浩賞