約180棟が焼けた大分市佐賀関の大規模火災を受け、被害状況の分析に活用してもらおうと、東京大大学院の渡邉英徳教授(佐伯市出身)が、航空写真を使って現地を3D(立体)表示する新たなデータを公開した。
大規模火災は11月18日に発生し、11日目となる28日に住宅が密集する半島部分が鎮火。火元から約1・5キロ沖合の蔦島は鎮圧で消火活動が続いている。
渡邉教授は、航空写真を撮影する「国際航業」(東京都)が19日に撮影した写真約30枚を活用して再現した。
3Dデータで見ると、現地は山から海側にかけて、すり鉢状の地形となっていることが多角的に確認できる。住宅が密集したエリアの木造住宅は被害が大きく、鉄骨・鉄筋コンクリートの建物でも構造体のみが残る。データでは建物の裏側に隠れている部分も見ることができる。
建物の間の通路は車が通れないほどの細さで、海岸沿いの道路に止められた消防車から何本ものホースを延ばして水を送り、消火作業に当たったことが確認できる。
渡邉教授は「火災による被害の全体像をいち早く把握でき、大規模に延焼した要因など細部を含めた検証ができる。復旧・復興に向けたデータとしても活用してほしい」と説明する。
発災後の航空写真を使って立体映像化する取り組みは、2024年の能登半島地震でも実施した。広範囲の土砂崩れや、被災した集落の様子、寸断した道路の場所をいち早く伝えた。
当時の3Dデータは公開後、1日に約100万回のアクセスがあり、避難、救助、復旧に役立てられた。
渡邉教授は「復興までの過程を継続的に見つめていきたい。長い目で見れば、火災の記録を教訓として社会が長く記憶していくための役割も果たせるはずだ」と話した。
<メモ>
リンクをクリックすると、制作した3Dデータを見ることができる。画面下の「>」「<」を押すと、場面を切り替えられる。スマホの場合は、画面に触れることで自由に移動させたり、拡大ができる。