【Gateインパクト】消防訓練エッセー

焦らぬよう使い方を覚えておきたい「消火器」

 火災発生。いざというとき、慌てずに初期消火や避難ができるかと問われれば、自信がない。「消火器は使ったことがない」という人が大半だろうし、もしかしたら一生使うことがないかもしれない。ビルにある「避難はしご」もしかり。使う事態にならないことが一番だが、使い方を知らないと「もしも」のときに困るのは間違いない。秋の火災予防運動(15日まで)に合わせ、消防庁や全国の消防本部、消防署は各地域で防火訓練や避難訓練を行い、住民の意識高揚に努めている。「定期的に学んでおくことが大事だ」ということで、先日、大分市内のとある訓練に参加した。

■初期消火と119番通報は焦るな

 場所は大分市中心部に近い地域のマンション。まずは指導員が「皆さん、このマンションのどこに消火器があるか把握していますか」と言う。「あれ? 知らない」と思った。普段、注意して見ていないため、視界に入っていなかった。指導員が設置場所を教えてくれた。「頭に入れておかねばなるまい」
 さて、その消火器の使い方だが、三つの基本を覚えておけば、何のことはない。上部にある黄色いピンを抜き、ホースを手に取り、レバーを握る。この動作だけだ。ホースを火元に向けて消火剤を噴出させる。一般的には水ではなく、粉のようなものが出てくるので、ここで驚かないように。粉が炎を包み、酸素を遮断して消すのだ。
 「トランキーロ」と何回か言っている間に消えるのではないかと、個人的には思う。「トランキーロ」とは「焦るな」の意味もあるスペイン語だ。そして指導員によると「火が天井に達するような状況になっていたら、消火器で消そうとするより、逃げてほしい」とのこと。消火器はあくまで初期消火用なのだ。
 次に119番通報。大事なのは「通報お見合い」にならぬようにすることだ。「誰かが通報しているはずだから、自分はしなくてもよかろう」という考えだと、結局、誰も通報していないという事態も起こりうる。「消防署は、より多くの情報を求めている。例えば、正面から見た状況を通報している人と、裏側にいる人の情報は違う。だから、何件通報が入ってもよいのです」と指導員。遠慮は禁物だ。
 また、通報中に消防から、住所や目印となる建物、現在の状況などを詳しく聞かれ「そんなことを言っている間にすぐに来て!」とイライラする人が中にはいる。しかし、すでに消防車は出動しており、通報内容は移動中の消防車にも聞こえているので、これこそトランキーロの精神で丁寧に答えることが、素早い到着につながると言ってよい。

■「仕切り板」は足で強く押して割れ

 そして、興味はあっても「触れて壊してしまうと大変だ」と多くの人が感じているのがマンションやアパートのベランダにある「仕切り板」だ。指導員によるとケイ酸カルシウムという材質でできており、そこそこ強度がある。避難の際にこの板を割って隣家のベランダへと移動し、場合によっては「避難はしご」のある場所まで割り続けて進むことになる。  
 割ったことがある人は果たして世の中にどれほどいるだろうか。実は筆者にはその経験がある。コンコンと拳で板をたたいてみると、感触から割と強い力が必要だと認識し、勢いをつけて右ヒザをたたき込んだ。米国で活躍中のプロレスラー・中邑真輔の必殺技「ボマイェ」(スタミナを消耗した状態の相手に向かって走り、あごや顔面にヒザ蹴りをぶち込んでマットに沈める技)をイメージしていたことを思い出す。
 さて、その「仕切り板」を割る訓練では、「やってみたい」と名乗りを上げた男性が前へ。指導員が「足の裏で強く押す感じでやってみてください」とアドバイス。その通りにやると、板が割れた。「場合によっては台所から持ち出したフライパンなどをたたきつけて割るという方法もある」と、実演を交えながら指導員が説明。「勢いをつけすぎてハイスピードで前蹴りをすると、足首の部分だけはまってしまって全体が割れない、ということがあるので注意を」と付け加えた。
 「仕切り板」は避難時の経路確保の重要なポイントだ。これをふさぐように物を置いてしまうと、逃げ場を失うことになる。鉢植えの植物やロッカー、ひどい場合はエアコンの室外機が置いてあるケースもあり、思い当たる人はすぐに改善してほしい。
 備えあれば憂いなし。命を守るため、訓練はとても大切なので、できるだけ参加しておきたいものだ。

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