「十二国記」(新潮社)のファンは大変多い。中津市出身・小野不由美さん著のファンタジー巨編で、シリーズ待望の最新作がついに9月17日に発売された。その日。一刻も早く手に入れたかったので、大分市のアミュプラザおおいた4階にある紀伊國屋書店に一番乗りするつもりで開店を待った。なぜ紀伊國屋書店なのかと言うと、十二国記オリジナルブックカバーや挿絵入りレシートなど、最新作購入特典がもらえるからだ。
アミュプラザおおいたのドアが開いた。しかし、不覚にも書店から遠いポジションにあるエスカレーターに乗ってしまった。早足で書店に向かい入店。迷わず平積みしてある最新作「幽冥の岸」を手に取り、すぐさまレジへ。
ところが、やはりと言うべきか、レジにはすでに2人の客がおり、チラ見すると、いずれも十二国記最新作を購入していた。早い。そして私の後ろに並んでいたレジ待ちの複数の客も、同じく最新作を手にしていた。あらためて十二国記の人気を実感し、同類の人々が大分にいることがうれしかった。
十二国記シリーズは、まだ読んだことのない皆さんに向けて「書評」という形で伝えるには難しい作品だ。なぜなら、まず理解しておかねばならないことや独特な用語が多々あり、これらが分かっていないと話が通じないからだ。しかし、私にはどうしても読んでもらいたいという思いがあるため、本を手に取るきっかけとなるよう、できる限りかみくだいて基礎情報を伝えたいと思う。
物語の舞台や人々の暮らしは、昔々の中国や日本を思わせる。しかし、そこは、まったく違う異世界なのだ。幾何学的な形の土地が12の国に分かれており、すべての国は同じ統治システムで成り立っている。
「慶(けい)」「戴(たい)」「恭(きょう)」など、中国のような名の12の国には、それぞれ王がいる。「慶」「戴」「恭」の文字は、「景」「泰」「供」といった同じ音の文字を使うことがある。最初はやや混乱するが、慣れれば何ということはない。
王を補佐して守護する役職を担うのは、人間ではない生き物だ。「麒麟(きりん)」という、ユニコーンをイメージさせる慈悲深い霊獣で、状況に応じて人間と獣の姿を使い分けることができる。
麒麟は「血のにおい」に弱く、戦闘には向かない。代わりに、この異世界に巣くう「妖魔(ようま)」という怪物を、自身との契約によって僕(しもべ)として従わせており、王を守らねばならない時などに、命令によってその力を発動させる。契約を結ぶには、神通力のような力でにらみつけてねじ伏せなければならない。
この異世界と、こちら側の世界である日本や中国が、災害のような現象でつながってしまうことがある。物語の重要なキーワードとなる「蝕(しょく)」である。そのとき、こちら側の世界から異世界へ、逆に異世界からこちら側の世界へと、人間が飛ばされてしまうことがある。
異世界の人間は、「卵果(らんか)」という木の実のようなものから生まれる。前述した「蝕」が起きることで、卵果がこちら側の世界にいる女性の胎内に宿って出産するケースもあり、これを「胎果(たいか)」と呼ぶ。
国が繁栄するか否かは王次第だ。悪政を行い、国が乱れると、妖魔があちこちに出現し、国が荒廃していく。
まだいろいろとあるが、書きすぎるとややこしくなるので、大ざっぱに言って、このあたりが基礎情報だ。
十二国記は、異世界の仕組みを覚え、世界観を理解することで物語にハマっていく。現在、全16巻。まずはオーソドックスに「慶」の国のエピソード1「月の影 影の海」を読むことをお薦めしたい。そして「戴」の国の麒麟「泰麒(たいき)」を描いたエピソード2「風の海 迷宮の岸」に進めば、もう次作を手に取らずにはいられなくなるだろう。
さらに、どこかのタイミングでエピソード0「魔性の子」は必ず読んでほしい。驚きと衝撃に襲われるはずだ。(虎)