今村翔吾著「作家で食っていく方法」
(SB新書・1045円)
タイトルもキャッチーなら、著者自らが登場した表紙も型破り。歴史・時代小説でヒット作を連発する直木賞作家による刺激的な指南書が生まれた。
「作家になる方法」「作家で食っていく方法」「売れる小説を書く方法」「これから生き残る方法」の4章立てからなる本書。
自身の経験と分析に裏打ちされた仕事の理想と現実、それに基づく実践するべきことなど有用な教えが、実態に即したストレートな言葉で次々と繰り出される。「作家になる」前の段階だけでも「作家になるために必要なことはたった一つ、読書量」「作家になるために捨てるべきことはプライド」「社会人経験の勧め」「長編を年3冊ペースで書け」…。
新人賞への挑み方と受賞後の強力な初手もアドバイスしてくれ、「なった後」の印税収入・重版の仕組みや、編集者との付き合い方、顧客(読者)のニーズをいかに把握するかも解説。
どんなテーマが売れるのかや見つけ方、物語構成の鉄則や魅力的なキャラクターの作り方…など、ノウハウと技術を赤裸々かつ惜しみなく公開しており、読んでいてなぜか笑みさえ浮かんだ。
通底して説かれるのは「天才的な筆力がある場合を除き、作家にもコミュニケーション能力が必要。相手(読者や編集者など)の求めていることと自分のやりたいことの一致点を見つけること」の必要性。
さらに、今に至るまで1日も書かない日はないという自身を例に「どんなに忙しくても書き続けること。怠惰で勝つのは無理」と訴え、「書き終えた時に思ったのは、これは小説家以外の職業を志す人にも、当て嵌(は)まる部分が多いのではないかということ」と述懐している。
旺盛な執筆の傍ら、書店経営や「日本ドラフト文学賞」「本の甲子園」の創設など新人作家を発掘・育成し、出版業界全体の盛り上げに尽力していることでも知られる著者。
作家としてのビジネス戦略をクールに伝えながらも、職業への矜持(きょうじ)、本と人への愛もちりばめられ、熱い気持ちの一端に触れることができる。(高橋桂子・大分合同新聞記者)