尾野徹著「『COARA』と情報市民公社」
(日本経済新聞出版・2750円)
茨城県で「つくば科学万博」が開かれた1985年は、近未来の扉に人々の手が触れた年だと言っていい。万博では最先端のテクノロジーに世界が目を見張り、あと少しで訪れる21世紀に胸が高鳴ったものだ。
その年に産声を上げたのがCOARA。「大分パソコン通信アマチュア研究協会」のことで、一地方都市の大分からネット社会構築に挑戦し、一大旋風(せんぷう)を巻き起こしたグループである。今でこそインターネットが地球上に張り巡らされ、電子メールや交流サイト(SNS)が当たり前に存在するが、このころは情報通信創生期と言っていい世の中。まさに手探りの状態からのスタートだ。
COARAの34年間は喜怒哀楽の連続で、例えるならば大人の文化祭である。物事を面白がる仲間たちが集まり、知識とアイデアと勢いで前進していった様子がよく分かり、最前線でけん引してきた著者は「当時の資料やデータを残していたので書くことができた」と話す。
著者は時代を次のようなカテゴリーに分けている。1985年~1994年前半にかけてのパソコン通信時代が「インターネット前夜」。1994年~1999年が「インターネット黎明(れいめい)期」。2000年から先が「ブロードバンド発展・普及期」。そして2011年以降が「スマートフォン普及期」というわけだ。なぜか、人類進化の過程図がオーバーラップする。
そうなると、未来をどう思い描いているのかが気になるところだが、「人間が何を考えているのか、脳波をコンピューターが読み取るAIネットワーク、またはテレパシーネットワークの世界」とズバリ。人の心が読める「テレパス」が登場するSF小説のような話だが、科学技術の躍動ぶりを見れば、それはないとは言えない。
本業である鬼塚電気工事(大分市津留)の会社経営との掛け持ちで、よくぞここまで突っ走ったものだと拍手を送りたい。そして、まだ面白いことをやってくれそうな予感がする。
(下川宏樹・大分合同新聞社編集局長)