【Gateインパクト】大商アルプス物語(下)それぞれの思いを胸に

チアの一員として応援した牧さん

 甲子園で輝いていたのは、選手だけではない。選手を後押しする家族や高校生も、それぞれの思いを胸に応援した。取材を続ける中で見えてきたのは、それぞれの素顔だった。

 エースの平田玲翔選手(3年)は、1回戦のピンチでリリーフ登板。初球でいきなり150キロを計測し、球場が大きくどよめいた。たった1球で球場の雰囲気を変えた。印象に残ったのは父親も同じだ。

 父の靖浩さん(46)は、会えば必ずあいさつをしてくれる。1回戦で平田選手が相手打者に死球を与えた際、何度も頭を下げる姿がX(旧ツイッター)で話題になった。その姿勢は、普段の靖浩さんの人柄そのものだった。息子の礼儀正しさも、父親から受け継いだのだろう。

 靖浩さんは陸上選手として全国大会でも活躍していた。20年前に大分合同新聞の取材を受けたことがあるという。「○○さんは今もいらっしゃるんですか」と聞かれた。20年も前の取材相手まで覚えていることに驚いた。

 その記事を見つけた。写真に写る若き日の父親は、平田選手とよく似ていた。「どこか遠い世界に行ってしまいそうですよね…」。息子の成長を喜びながらも、少し寂しさを感じているように見えた。

 大分大会から取材を続けていたこともあり、先生や在校生とも顔なじみになった。

 大分大会決勝で取材したのは牧さくらさん(3年)。このときは在校生の一人として話を聞いた。牧さんは吹奏楽部のカラーガートをしている。チアリーディング部の一員として最前列で応援しているため、会話を交わす機会も多かった。

 選手が学校に帰ってきた14日、牧さんも出迎えに来ていた。野球部の関係者がほとんどだったため、少し不思議に感じていた。後日、吹奏楽部の取材をした際に、その理由が分かった。

 大分大会から全試合で先発した米田泰志選手(3年)が「推し」だと教えてくれたのだ。「一緒に写真を撮ったんですよ」と、うれしそうに話してくれた。チアの応援で見せるりんとした表情とは違う、とびきりの笑顔。一人の女子高校生の素顔が垣間見えた気がした。

 甲子園までの道のりも、決して楽ではない。それでも、多くの在校生が応援に駆け付けた。1回戦は試合前日の午後10時にバスで学校を出発。生徒たちは18時間もかけて現地入りした。ある在校生は「死ぬかと思いました…」と、長時間の移動を振り返った。そんな彼女も2回戦のアルプスに姿があり、最後まで楽しそうに応援していた。

 取材を重ねる中で、「新聞、見ましたよ」と声をかけてくれる生徒も増えた。一方で、応援団長の亀崎悟君(2年)だけ、なかなか記事を見てくれなかった。会うたびに「見てないです」と即答。しまいには「しん、ぶん、ですか? それって大分の新聞ですか?」と聞かれた。拍子抜けした。

 いつも明るく、周囲を和ませる亀崎君。その人柄は取材を通じても伝わってきた。応援団長に指名されたのも納得できる。何より応援中の表情が良く、写真に何度も収めた。それだけに記事を見てほしいという思いも強かった。

 「亀崎君も読みたくなるような記事を書こう」。そう自分に言い聞かせた。

 果たして亀崎君はこの記事は読んでくれるのかな。野球部で誰か見た人がいたら、ぜひ亀崎君にも見せてください(笑)。

(R) 

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