【Gateインパクト】「大分県行進曲」こぼれ話㊤90年前のレコード、どうやって再生するの?

1935年に発売された「大分県行進曲」のレコード。作詞した故・庄武憲太郎さんの親族から大分合同新聞社に寄贈された

 皆さんは「大分県行進曲」をご存じでしょうか。「耶馬の流れの水清く~♪」で始まり、躍動感のあるメロディーに乗せて大分県の景観や歴史を歌い上げる楽曲です。

 年配の方は学校で聴いたことがあるかもしれません。県内一周大分合同駅伝で流れていた曲、といえば「あー、あれか」と思い当たる人もいるのではないでしょうか。
 
 この歌が作られたのは、今から90年以上前の1935(昭和10)年。大分合同新聞の前身に当たる「豊州新報」の創刊50周年の記念事業として制作し、レコードを発売しました。

 歌詞は一般公募で、故・庄武(しょうたけ)憲太郎さんの作品が選ばれました。庄武さんは現在の杵築市大田波多方の出身です。その本人が所有していたとみられるレコードがこのほど見つかり、おいの妻に当たる庄武純子さん(90)から大分合同新聞社に寄贈をいただきました。
 (6月7日付の本紙に記事を掲載しました)

■「針が合わない」

 記事を新聞に載せる前の5月のことです。記者が書いてきた原稿を読んで、私は思いました。「曲を聴きたいと思う読者もきっといるだろう。レコードを再生して、動画に撮ってホームページで公開しようかな」

 最初はわりと気軽に考えていました。レコードプレーヤーを持っているという社内の先輩にお願いし、先輩も快諾してくれました。

 ところが「調べてみたら、針が合わない」と言うのです。レコードは1950年代ごろまで作られていた「SPレコード」。その後主流になった「LPレコード」用の針では再生できず、下手をしたらレコードを傷つけてしまうかもしれない、との話でした。

 大事なレコードを傷物にするわけにはいきません。再生できる手段を探っていたところ、別の先輩から連絡がありました。ありがたいことに、由布市湯布院町にある蓄音機の専門店「梅屋」が、再生に協力していただけるというのです。

 それから3日後、レコードを持参してお店を訪れました。実は一つ心配していることがありました。寄贈をいただいたレコードは、よく見ると少しヒビが入っていたのです。
 
 店を経営する梅田英喜さん(69)に見てもらうと、「大丈夫ですよ」と心強い言葉が返ってきました。梅田さんがブラシで盤面のほこりを払い、レコードを蓄音機に載せ、針を落としました。

 ザザー、と雑音が鳴り、ええっ?と不安になった次の瞬間でした。「ターンターンタッタララッタ♪」。大きな音でイントロが始まりました。高揚感のある聴き慣れたメロディー。間違いなく大分県行進曲です。無事に聴けてホッとしました。

 90年以上前のレコードから、思っていたよりずっときれいで張りのある音色が響いてきました。歌詞は1番から5番まで、3分弱の演奏でした。

■数多くのヒット曲手がける

 大分県行進曲のレコードは、コロムビア(現・日本コロムビア)から発売されていました。伝統ある大手レコード会社です。

 歌手の名前は「中野忠晴」と記されていました。コロムビアに所属する歌手だったようです。戦後の1960(昭和35)年に再リリースされた大分市出身のバリトン歌手・立川澄人(のち清登)さんが歌う「大分県行進曲」と比べ、少し明るく軽快な歌声のように感じました。

 作曲・編曲は「江口夜詩(よし)」。調べてみると、「憧れのハワイ航路」など数多くのヒット曲を手がけた作曲家でした。大分県行進曲を作曲したのがそんな大家だったとは全然知りませんでした。

 B面は「管弦楽」と記されていました。こちらも再生してみると、歌唱なしの少しスローテンポな演奏で、木琴などでアレンジを加えていました。

 再生に使った蓄音機について、梅田さんに教えてもらいました。1928年の英国製だそうです。電気は不要で、レコードを回転させる動力はぜんまい。台の横に付いているハンドルを回してゼンマイを巻いていました。

 音も電気信号による増幅ではなく、針の振動をラッパ型のホーンで大きく鳴らす仕組みです。電気を使わずシンプルな原理で見事に音楽を再生できることに、改めて驚かされました。

 蓄音機用の鉄の針は使い捨てで、1回レコードを再生するごとに取り換えるそうです。「そんな貴重な物を…」と恐縮しましたが、針は現在も生産されているとのこと。安心しました。

 動画撮影も無事に終了。日本コロムビアから許諾を得て、期間限定で公開することになりました。90年以上前のレコードを蓄音機で再生した音色に、ぜひ耳を傾けてください。公開は7月6日までです。

 ところで、私が大分県行進曲を初めて聴いたのは20年以上も前のことですが、その時から、歌い出しのメロディーがある曲に似ているなぁ、とずっと思ってきました。

 それは、関西でよくテレビに流れる「かに道楽」のCMソング。大分県行進曲の「や~ばのな~がれの」と、かに道楽の「と~れとれ ぴ~ちぴち」がそっくりなのです。どなたか関西在住の方、もしくは関西に住んだことのある方で、賛同してくれる人はいないでしょうか?
(小林大輔)

 ※「大分県行進曲」こぼれ話(下)「歌詞カードにあの店の名が。えっ、ダンスの振り付けも?」に続く(後日掲載します)

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