【Gateインパクト】此君亭茶会 「人間国宝」生野祥雲斎の美意識に浸るぜいたくな時間

茶会が開かれた此君亭=大分市(撮影・渡辺航)

 1967(昭和42)年、竹工芸で初めての重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を受けた生野祥雲斎(1904~74年)が建て、暮らした「此君亭(しくんてい)」。祥雲斎の息子で竹工芸家の徳三さん(84)と親子2代の美意識を詰め込んだ邸宅は大分市西部の別府湾を望める、木々に囲まれた静かな場所にある。
 4月29日の「昭和の日」、その此君亭で開かれた徳三さん主催の茶会に参加した。敷地内の茶室で濃茶をいただく本席、母屋2階の座敷「衆芳軒」で薄茶をいただく薄席の2部の構成で催され、それぞれの部屋には祥雲斎と徳三さんの愛蔵の品が置かれた。
 茶室では徳三さんの妻、寿子さんの実家から受け継ぐ江戸初期の黒楽、祥雲斎が求めた李朝堅手、黒薩摩というぜいたくな3碗の茶わんが並び、濃茶をいただく。開かれた窓から見える庭には野花が咲き、雨上がりの春の景色が心を静める。
 次に薄茶をいただくために、母屋の2階に移動する。1950年に建てた当初は別府湾を望めたことから「小海(こかい)荘」と名付けられた8畳ほどの部屋には、庭木と池を楽しめる縁側が配置されている。
 屋外に目を向けると、せり出すように勢いよく成長する若葉の緑が目にまぶしい。母屋や庭は祥雲斎と現代の名工に選ばれた庭師の山口正義さん(故人)が造り込んだものを基に、徳三さん夫婦と庭師の藤原伸吉さん、大工の衛藤文秋さんが手を加えた。絶妙なバランスで配置された庭木が、奥の山々の木々と一体となり、奥まで庭園が続くような風景をつくり出す。
 床の間には1950年ごろ、祥雲斎が贈った竹皿(四極皿)のお礼にと、武者小路実篤が描いた四極皿の絵がかけられている。石川県小松市から取り寄せた菓子が、その四極皿に盛られる。祥雲斎が考案した田口菓子舗(大分市)のやせうまが提供され、二服の薄茶をいただく。
 時折聞こえるカエルの鳴き声や野鳥のさえずり、敷地内の湧き水でたてた茶の淡い苦み、さりげなく場を彩る数々の調度品、両手で包み込んでしっくりと感じる茶わんの手触り。五感を研ぎ澄まして此君亭の魅力を堪能する、ぜいたくな時間を過ごすことができた。
 今回の茶会では徳三さんと親交のある茶道教師、熊本鮮雅さん(別府市)の手助けで、生野家に交流のある愛好家ら6組約40人をもてなした。次回以降の開催は検討中という。
 此君亭をどう後世につなぐか―。此君亭に魅せられ、愛する人の共通の課題を解決する糸口を模索する機会にもなった。
 祥雲斎は茶道への憧れがあったものの、家元制度や型にはまった作法などは性に合わなかったらしく、自身がデザインした茶道具も伝統的なものと少し違う独自の美を反映した。反骨心の塊で野武士風情の写真を多く残した彼らしいエピソードだ。
 徳三さんも度々「わしは旅館の主人や茶道の家元ではないからのう」という話をされる。一連のおもてなしを終え、「今日は一日多くの人が来て大変だったなあ」と話す姿は、竹工芸家として作品と厳しく向き合う姿とは違う、人を喜ばせようと奔走した優しい亭主のまなざしがあった。(小田原大周)

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