有害鳥獣による大分県内の農林水産物の被害額が11年ぶりに増加した。県によると、2024年度は1億5700万円で前年度比1600万円(11%)の増。田畑への防護柵設置や捕獲など予防対策の効果で減り続けていたが、イノシシが増えて柵がない未対策の場所などで農作物を食い荒らされた。対策として被害箇所に集中的に防護柵の設置を進めているほか、狩猟者の育成に一層力を入れる。
被害は農業が1億3100万円で8割超を占めた。林業は1700万円、水産・その他は900万円。
加害鳥獣はイノシシが61%で最も多く、シカが23%、サルやカワウなど「その他」が16%だった。
県振興局の管内別で見ると、被害額は北部を除く五つの振興局で増えた。豊肥が4669万円で例年同様に最も大きく、増え幅も44%で最大。西部が3044万円、中部が2697万円で続いた。
増加の要因について、県森との共生推進室は「山中で増えたイノシシが食べ物を探しに人里に下り、防護柵がない場所を見つけて現われるようになった」と分析。農作物の味を覚えて繰り返し出没し、被害が拡大したとみている。
イノシシは過去最多の4万4333頭を捕獲し、前年度(2万6622頭)の約1・6倍に上った。一度に多くの子どもを産むため捕獲だけでの被害防止は難しく、対策は予防が重要となる。被害の大きい集落に設置費用を助成している防護柵は、24年度は総延長958・8キロ(前年度比20%増)に設けた。本年度は756・7キロに整備する計画。
捕獲が効果的なシカは4万1922頭を捕まえ、ここ数年は4万頭台で推移している。
県内の狩猟免許取得者は5244人。免許申請の手数料免除やセミナー開催で人数は横ばいなものの、約7割が60代以上で高齢化が課題のため、若い世代への取得働きかけを強める。
県が11年度に行政や関係者でつくる鳥獣被害対策本部会議を設置して以降、被害額は減少傾向が続いていた。同年度の3億1300万円から半減。33年度には9千万円以下にする目標を掲げている。
24年度の増加を受け、集落ぐるみの対策を強化。本部長の渕野勇県農林水産部長は「予防、捕獲、狩猟者の確保、ジビエ普及の4本柱で取り組む」と話している。