「おおいた消防指令センター」が10月から本格運用 119番通報集約し広域災害に対応

119番通報に対応する指令員=大分市荷揚町

 県内の119番通報を一括して受ける「おおいた消防指令センター」の本格運用が10月1日から始まる。指令業務を県全域で共同運用するのは全国初。近隣自治体への出動が円滑になるほか、広域災害での対応力向上や、一元化に伴うコスト削減も期待される。

 「消防119番です。火事ですか、救急ですか」。19日午後、大分市荷揚町の荷揚複合公共施設内に新設されたセンターでは、マイク付きのヘッドホンをした指令員ら計10人が対応に追われた。
 センターは7月2日に稼働を始めた。大分市消防局管内を皮切りに取り扱う地域を順次広げ、8月6日から県全域を網羅している。1日当たりの通報件数は約300件に上るという。
 多くの通報に対応するため、最大36回線を準備。職員は県内の14消防局・本部から派遣された42人で、2班に分かれて働いている。
 地理に不案内な職員が通報を受ける可能性もあり、混乱が起きないか懸念されたが、現状で大きなトラブルはないという。
 古沢雄一センター長(56)は「準備期間の4月から訓練を積んできた。指令員一人一人の能力が向上し、円滑な対応ができている」と胸を張る。

 スムーズな移行の背景には、先端技術を取り入れた新システムの恩恵もある。センターの壁面には55インチの液晶ディスプレーを24面配置。画面上の地図には、衛星利用測位システム(GPS)で特定した通報者の発信場所が表示されるため、出動場所に迷うことはほぼない。
 消防・救急車両の位置もGPSで把握でき、緊急時は最も近い車両を最短ルートで向かわせることが可能になった。
 システムの整備費は約65億円。各消防が個別に導入すれば159億円かかるとの試算もあり、半額以下に圧縮できた計算になる。

 センターで働く職員は、県内の各自治体に籍を置いたまま派遣されている。着ている制服も違えば、給与や手当もまちまちだ。同じ業務内容にもかかわらず、異なる待遇となっており「現状で統一は難しい」という。
 運営費は各消防の管轄区域の人口比に応じてそれぞれの自治体が負担する。消防関係者の一人は「建設費は国から財政支援があったが、運営費は自治体だけで賄う。県全体で人口が減る中、維持していくのは簡単ではない」と口にした。

 県内は30年以内に70~80%の確率で南海トラフ地震に襲われると想定されている。一元化は、大地震などの広域災害でも効果が見込まれる。
 各消防の119番が独立したこれまでの仕組みでは、広範囲が被災した際、県全域の状況を把握することが難しかった。新システムでは、被害の激しい地域がすぐに分かり、隣接自治体への出動がスムーズになるという。
 古沢センター長は「情報共有や応援態勢の構築がしやすくなる。台風や大雨に伴う災害でも役立つだろう。大分県の防災力の向上につなげたい」と語った。

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 取材はテレビ大分(TOS)と共同で実施した。TOSは26日の生ワイド番組「ゆ~わくワイド」(午後4時50分~同7時)で特集する。

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