170人に上る死者が出た11月のタイ南部の洪水で、政府や地元当局の対応の遅れが被害拡大につながったと批判が高まっている。アヌティン政権は少数与党で、9月の発足直後から地方行政の人事を通じて次期総選挙に向けた基盤強化を図ってきた。タイメディアは専門家の見解として「旧態依然の縁故主義」と指摘。未熟な災害対応につながったと伝えた。
「地方知事や地区長の人事はよく『大きな家』のつながりで決められる」。国家開発行政研究所のピチャイ講師は11月30日付の英字紙バンコク・ポストで、大きな家と呼ばれる各地の有力者と中央政府が慣習的に関係を密にし、能力とは別の尺度で地方人事を仕切っていると懸念を表明した。
南部では11月19日ごろから断続的に豪雨が続いたが、地元当局は当初「状況は統制されている」と発信。豪雨を過小評価して避難の遅れにつながったと批判の声が上がった。ピチャイ氏は、最も被害が大きかったソンクラー県で、水害の多い時期にもかかわらず経験豊富な知事が交代になったばかりだったことも原因だと指弾した。