北海道・知床の羅臼岳で登山客の男性がヒグマに襲われて死亡した事故で、地元の専門家が襲撃した母グマに「SH」と識別コードをつけ、人を攻撃したことがない個体として記録していたことが21日、分かった。道の調査で、男性が見通しの悪い登山道を走って下山中だったことも判明。男性に遭遇した母グマが子グマを守ろうと襲いかかったとの見方が浮上してきた。
「知床財団」は、男性を襲った母グマを事故以前から「SH」と記録。人に対する警戒心が低く、道路に出てきて追い払われても反応は鈍かった。人を襲うような過激な行動は見られなかったという。
地元住民からは「岩尾別の母」と呼ばれ、羅臼岳山中でも度々目撃されたが、穏やかな様子だったという。
道は21日、事故の調査結果を公表。男性は襲撃直前、同行者から離れて単独で走り、岩尾別温泉に向かって下山していた。クマよけの鈴は携帯していた。道幅が狭く見通しの悪いカーブで母グマに遭遇したとみられる。
北海道大の下鶴倫人准教授(野生動物学)はヒグマが生息する山中を走るリスクについて「防御反応として襲われる可能性が高い」と指摘した。