世界各地から選手が集まる大分国際車いすマラソン。海の向こうからは22カ国の60人がエントリーしている。言葉も文化も異なる選手たちを支えるのが、通訳ボランティアグループ「Can‐do(キャンドゥ)」だ。
1995年に発足し、30年以上にわたり大会を支えてきた。活動は単なる通訳にとどまらない。空港などへの送迎、ホテルへの引率、練習への同行、荷物の積み降ろし。選手が大分に到着してから帰路に就くまで、その活動は多岐にわたる。
長年の活動を通じて、選手との間にはさまざまな縁が生まれた。代表の後藤恵子さん(73)は「30年はあっという間だった。大会を通じて多くの縁もできた」と振り返る。毎年顔を合わせる選手も多く、単に競技を支えるだけではない交流が続いている。
一方で、メンバーの高齢化は悩みだ。後藤さんは「大会の存続にはキャン・ドゥの世代交代も必要。若い人がどんどん出てきてくれるとうれしい。これからも大会と共に走り続けたい」と、次の世代への期待を語る。
先日の説明会で出会った県立芸術文化短期大学のジュリー・ヌートバー教授(58)は、今回が30回目の参加となる。米国カリフォルニア州出身で、1990年に仕事で大分へやって来た。当初は1、2年で帰国するつもりだったが、大分で出会った日本人男性と結婚し、そのまま定住。気付けば36年がたった。
毎年楽しみにしているのは、繰り返し大分を訪れる米国選手たちとの再会だ。顔なじみの選手と言葉を交わす時間は、30年続けてきた活動の楽しみでもある。
通訳する際に難しく感じていることを尋ねると、競技への理解が欠かせないと教えてくれた。車いすマラソン特有の専門用語を知ることはもちろん、選手が何を伝えようとしているのか、言葉の裏側までくみ取ることが大切なのだという。
「言葉の裏にある気持ちを伝えることが大切なんです」
そして、今大会への思いをこう話した。
「出場した選手が全員無事にゴールできるように。あとは、大分のことをいいところだと思ってくれるように。レースだけじゃなく、大分に来ている期間を全部楽しんでもらいたい」
10月31日の説明会では、変更されたスタート・フィニッシュ地点を実際に歩き、選手の動線や誘導方法を念入りに確認した。海外選手からの質問を想定したやりとりもあり、和やかな雰囲気の中にも真剣な表情が見られた。
説明会の締めくくりには、ヌートバー教授のボランティア参加30回を祝うケーキが用意された。20代から70代まで、幅広い世代のメンバーがケーキを囲み、笑顔で記念撮影。選手たちとの再会や新たな出会いを心待ちにする様子が伝わってきた。
言葉を訳すだけなら、今やスマートフォンでもできる。けれど、長年の交流で育まれた信頼や、相手の気持ちをくみ取る心配りまで、機械が簡単に代わることはできないだろう。
いよいよ大会本番が近づいてきた。海外選手を迎える準備は着々と進んでいる。大分の大会を支えてきたのは、そんな人と人とのつながりでもある。
(衞藤知愛)