【Gateインパクト】訪中した秦喜秋さん(国貿促筆頭副会長)に聞く

訪中について語る日本国際貿易促進協会の秦喜秋・筆頭副会長

 中国政府の指導部と相次いで会談したことが注目された岩屋毅前外相による9月末の訪中。北京に同行した日本国際貿易促進協会(国貿促)の筆頭副会長、秦喜秋さん(80)=大分市出身=に中国政府の姿勢や訪中の意義、日中関係の現況などを聞いた。

 ―現在の日中関係をどう見ているか。

 「高市早苗首相の国会答弁以降、冷え切っている。中国政府が渡航の自粛を呼びかけたことによって訪日客が減少するなど影響が出ている。ただ、日系の店が襲われるような事件は起きておらず、一般の中国人は冷静に受け止めているように感じている」

 ―現地では、どのような影響が出ているか。

 「現地の邦人や企業の関係者はとても苦労している。地方の行政の窓口でも業務が停滞し、地方都市に進出したい企業の投資案件が滞っている。中国から日本の地方空港への直行便が減便・廃止され、日本企業の業務に支障が出ている」

 ―国貿促にとって今回の訪中の意義は。

 「2012年に尖閣諸島問題など政治的な対立が起きた時も訪中して対話した。政治関係が冷え切っていても、経済交流を目的とする民間団体の立場だから対話ができる。今回も経済担当の何立峰副首相に直接、民生用レアアース(希土類)の規制緩和、邦人の身の安全を守ることの必要性などを訴えることができた」

 ―中国側からはどのようなメッセージがあったか。

 「何副首相からは経済関係を重視するとの明確な意思が伝わってきた。『貿易は伸びており、日中の経済関係は切れない。今後もしっかり続いていく。今回のような事態があっても必ず克服されて、この流れは絶対に変えられない』と言い切っていたことが、とても印象的だった」

 ―現地視察はどうだったか。

 「中国側のセッティングで『中日イノベーション協力モデル区』を視察した。建築中の千人規模のレセプションホール前の広場から現場を見た。中国側から「日中のイノベーション創出基地を設けます」と説明を受けた。日本を含め世界中から投資を呼び込みたいとの姿勢が明確に伝わってきた」

 ―副会長として20年にわたって訪問を重ねてきた中で、中国の変化をどう見ているか。

 「多くの技能実習生を日本に受け入れていた頃を考えると、中国経済は随分と進んだ。特にデジタルや先端技術の領域では一気に追い抜かれた印象だ。北京などの街中では当たり前のように自動運転の車が走っている。ドローンは大型貨物を地方に運んでいる。人を乗せる『空飛ぶタクシー』は営業運転の直前の段階まで来ている」

 ―日本の世論の中には、経済安全保障の観点から中国とは離れるべきだとの声も出ている。

 「現実を直視してほしい。対中貿易は貿易額全体の2割を超え、最大の貿易相手国となっている。どの国が代替できるのか。中国との貿易を失えば日本経済が大きな打撃を受けてしまう」

 ―中国が相手の経済活動は政治に左右されやすい。

 「日本の最大の貿易相手国は社会主義国であるということを再認識すべきだ。中国政府の統制の下に経済が動いている。企業活動一つ取っても政府の意向が反映される。その前提で向き合わなければならない」

 ―改めて国貿促の役割は。

 「日中国交正常化前の1954年から交流を始め、72年間の歴史を持っている。今回の訪問で中国側の対応があったのも、これまでの積み重ねがあったから。日中友好協会など主要7団体の中で最も古くから交流してきた。これからも両国をつなぐパイプであり続けたい」

 【プロフィル】しん・よしあき 1945年生まれ。大分市畑中出身。九州大経済学部を卒業後、住友海上火災保険に入社。合併後の三井住友海上火災保険で副社長、会長を歴任し、名誉顧問。2006年に日本国際貿易促進協会に加入した。22年から在京大分県人会長を務める。

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