【Gateインパクト】大商の横顔(6)~甲子園臨時支局通信~

大商を引っ張る平田主将(中央)=大阪市内

 バレーボールやサッカーで時折耳にする「ジャイアントキリング」。格上に勝利するという意味で、野球では「下克上」や相撲用語の「大金星」といった言葉が使われてきた。大商が次にぶつかる英明(香川)はかなりの強豪。ふと冒頭の“カタカナ”を連想した際、昨年11月の「春高出場」を懸けた全日本バレーボール高校選手権女子県代表決定戦を思い出した。
 
 近畿地方を主会場に開催中のインターハイでは、女子バレーボールで県勢の東九州龍谷が見事に準優勝。惜しくも9年ぶりの全国制覇はならなかったが「東龍ここにあり」を全国に知らしめた。

 そんな全国区の強豪相手に、決勝で近年まれに見る好勝負に持ち込んだのが大商。中でも3年生でただ一人のプレーヤーだった平田咲凪主将の存在が大きかった。今夏の甲子園で一躍脚光を浴びる平田玲翔主将(3年)の、一つ上の姉だ。

 彼女は「打倒東龍」を掲げてひるむことなく真正面から立ち向かい、絶対女王を苦しめた。あと一歩で夢破れ、大粒の涙を流しながらも、率先してボールやタオルを片付ける姿は今も鮮明に覚えている。翌日の紙面に載せたコメントは次の通り。
 大分商・平田咲凪主将(3年)の話 練習してきたことを信じて戦えたので悔いはない。最後まで全員で笑顔でプレーできた。まだまだ伸びしろのあるチーム。後輩に託したい。

 仲間を思い、時に嫌われ役も担いながらチームの成長を最優先に考えていた。そんな彼女を思い起こせば、今年1月に主将になり、個性豊かなチームを一枚岩にまとめ上げた“弟”の姿が自然と重なる。

 姉2人はともに大商バレー部出身。咲凪さんの進学に際し、母は玖珠町大隈を出て大分市の大商そばに部屋を借り、父と玲翔少年は町に残った。大商の保健体育教諭として咲凪さんの活躍を温かく見守っていた那賀誠監督が「野球のうまい弟」の話を聞きつけたのは「運命」だったのかもしれない。
 
 玖珠ボーイズで白球を追いかけていた“金の卵”の元へ、那賀監督は誰よりも早く駆け付けた。「一緒に野球をやろうや」。3年後にチームを甲子園に導く大黒柱が伝統校の門をたたいたきっかけは、実は“姉ちゃん”だったというわけだ。

 本格右腕は生まれ育った町を出て、母と咲凪さんと暮らし始めた。得意料理の「豚の角煮」を丹精込めて仕上げ、仕事で疲れた母と部活で汗だくになって帰ってきた姉に振る舞うことも。そして今、日本中の注目を集め、連日約7万~8万人が熱狂する夢舞台にいる。

 最初に言ったように、英明(香川)はかなりの強敵だ。昨秋の四国大会を制し、続く明治神宮大会でも4強入り。今春のセンバツでも8強入りした。今夏は優勝候補の一角だった関東第一(東東京)を1回戦で下し、間違いなく波に乗っている。乗りまくっている。

 冒頭の「ジャイアントキリング」だが、高校生同士の試合にはそもそもそぐわない。ただ「自分たちは出場校の中で一番弱い。だから一丸でやろう」と考えている“大分っ子”たちが頼れる主将に導かれ、全国有数の強豪と渡り合う姿を見たい。多くの県民が期待を寄せる2回戦が、いよいよ近づいてきた。  (福)

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