【大分】大分市佐賀関の田中地区は昨年11月の大規模火災発生後、初めての盆を迎える。15日は供養盆踊りがあり、住み慣れた土地を離れて生活する被災者が帰ってくる機会となる。会場の田中公民館前には7年ぶりにやぐらが組まれ、口説き唄の練習も熱を帯びる。
口説き唄の一つで地域の歴史と暮らしが息づく「きそん唄」は全16節で構成される。豊作や天下太平を願う言葉、「おかのもぎはで鯛を釣る」といった港町らしい情景や自然の描写などが並ぶ。かつて「上り下りの船をまつ」と歌われた港町のにぎわいを取り戻すように、当日は地域を離れた仲間を迎える。
今春、公民館の倉庫から、古い口説き帳のコピーや「きそん歌」が録音されたカセットテープが見つかった。長年眠っていた資料の存在は、田中地区の住民が、自分たちが守り、つないできた、地域の伝統の重みを再認識した。
練習は7月28日に始まり、公民館には口説手やはやし手、太鼓の10人ほどが集まる。指導をする森則人さん(80)は、こぶしや節目、踊り手が心地よく踊れる太鼓やはやし手との間を伝えた。
口説手の岩川輝明さん(82)は「各地から帰った仲間に、やっぱり田中はいいなと笑顔になってもらいたい」。太鼓の増田浩二さん(72)は「みんなの踊りと心を一つにするような、力強く温かい太鼓の音を響かせたい」と意気込む。
田中地区の盆踊りは、新型コロナウイルス禍の影響で、2020年にいったん途切れた。24年に復活したが、少子高齢化や人手不足で、トラックの荷台が「やぐら」の代わりだった。今年は高さ約2メートルの盆踊りの象徴が復活する。
火災以降、各地へばらばらに暮らす被災者たちの間では、顔を合わせる機会が減り、地域の絆が薄れてしまうことへの強い危機感が広がる。森さんは「今年の盆踊りは例年とは違う。しっかり練習を重ねたい」と話した。