大分大会優勝に大きく貢献した大商のエース平田玲翔主将(3年)は、プロも熱視線を送る注目選手。その平田が大会開幕の直前に姿を消した。数日間学校を休み、「平田が故障したらしい」「投げてこないかもしれない」。うわさはライバル校に一気に広がった。
実際は、検査で肩の関節にわずかなズレが見つかり、調整を目的にした「リハビリキャンプ」で1週間ほど入院しただけ。不安要素を解消して万全の状態で夏を迎えたエースは、登板のたびに「150キロ」超えを連発。「ピンピンしてるじゃないか…」と対戦校はあっけにとられた。
そんな平田が入院生活を終えて学校に戻ってきた日のこと。那賀誠監督は朝から「今日からやっと登校してくる。いつ報告に来てくれるんやろ」とそわそわしていた。しかし昼になっても音沙汰がない。不安な気持ちで校内をうろうろしていると、遠くから「那賀先生! ナカセンセー!」と見たことのない笑顔の平田が、聞いたことのない大声で駆け寄ってきた。
「ふっ。かわいい奴め」―。当然、検査結果の報告だろうと待ち受ける指揮官。だが笑顔の平田の第一声は「きょう、ウエートでいいっすか?」だった。
1週間ぶりの会話で、まさか「本日の練習内容」から入るとは…。おちゃめな主将に面食らいながらも、その表情で「本当に言いたいこと」は伝わってきたという。「先生! 僕、万全っす」
大黒柱はマウンドや打席ではもちろん、報道陣の前でいつも堂々としている。ただそれが全てではないことを、ずっと見てきた指揮官は知っている。「あいつはほんとはシャイなんよ」。こっそり教えてくれた。(福)