【Gateインパクト】ネクタイ男子は絶滅危惧種?

 10年ぶりに外回りへ戻ってきた。

 「取材に行くなら、それなりの格好をしなきゃ」

 そう思ってクローゼットの奥からジャケットを引っ張り出した。取材で歩き回ることを考えて少しきれいめの靴を選び、久しぶりの県庁へ向かった。
 
 ところが、着いて最初に思った。

 私の方が、ずっと堅い格好をしている。
 
 男性職員はジャケット姿でも、その下はTシャツやポロシャツ。ネクタイ姿は探さないと見つからない。女性もパンツスタイルが主流で、かつて当たり前だったスカートにストッキング姿は少数派だ。
 
 そして、もう一つ驚いたのがマスクだった。新型コロナが落ち着いて久しいが、県庁でも2、3割の人がマスクを着けているように感じる。担当者の顔を覚えるのに苦労し、小さな声で話されると聞き返してしまうこともしばしばだ。
 
 たった10年なのに、オフィスの景色はすっかり変わっていた。
 
 そんなことを考えながらデータベースを開くと、18年前の記事が目に留まった。

 見出しは「クールビズ4年目、広がる一方で まだ抵抗感? ノーネクタイ」。
 記事には「商談相手などに不快感を与えるのでは」「会う人もノーネクタイなら気にならないのだが…」と、ネクタイを外すことに戸惑うビジネスマンの声が並んでいた。当時、県のクールビズ実施登録事業所は全体のわずか0・6%。「ネクタイを外す」というだけで、一つの決断だった時代があった。

 大分県では2024年11月から職員の軽装勤務が通年化され、ノーネクタイや上着を着ない勤務が年間を通して可能になった。民間でもビジネスカジュアルが広がり、「クールビズ」という言葉を意識することさえ少なくなった。

 背景には、働き方の変化だけではなく、夏そのものの変化もある。大分市の6~8月の平均気温は、05~14年の10年間平均が約25・9度だったのに対し、16~25年は約26・5度。昨夏は日田で真夏日が111日、最低気温が25度を下回らなかった日も大幅に増えた。暑さは確実に、私たちの「当たり前」を変えている。

 服装は流行ではなく、その時代を映す鏡なのかもしれない。

 10年ぶりに外回りへ戻ってきた私は、ネクタイを締めたサラリーマンを探していた。

 そして10年後には、今の「当たり前」にも、また驚いているのだろう。

(衞藤知愛)

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