【共生リアル―新たな隣人たち】大分県の日本人ムスリム㊦ 多様な価値観に触れ、問い直した末の信仰

自分なりの信仰の道を歩み始めた藤田ダリーンさん=5月下旬、別府市の立命館アジア太平洋大

 日本人の中には自らの意思でイスラム教徒(ムスリム)になった人のほか、親の信心の下に育った人もいる。
 別府市在住の大学生藤田ダリーンさん(20)はそんな出自に思い悩んだ時間を経て、自分なりの信仰の道を歩み始めている。
 「お前の目、テロリストみたい」「死ね」
 生まれ育ったエジプトから母の故郷・日本に移り住んだのは2014年。奈良県内の小学校で過ごした時期は、過激派組織イスラム国が日本人の人質を殺害し、ムスリムへの視線が厳しくなっていたタイミングと重なった。
 「主張の強い性格も嫌われた原因の一つかもしれないけど…。とにかく言葉の暴力が激しかった」

 給食の「いただきます」を巡って級友に責め立てられ、泣いてしまったことが忘れられない。
 声をそろえて手を合わせる場面でそうできなかったのは、家の食卓で「いただきます」をして叱られた経験があったからだった。合掌する姿は、たとえ無意識でも仏教的なのかもしれない。「父の目には一神教の原則に反して他の存在に祈った、と映ったようでした」
 親には教義を守るよう言われ、教義に従ったら学校でいじめられた―。つらいのはムスリムに生まれたせい? 信仰に対する複雑な思いが広がっていった。
 日本社会でムスリムとして生きることは、ずっとしんどかったという。

 24年春、立命館アジア太平洋大(別府市)に進学したことが転機になった。
 各国の学生が集うキャンパスで、自分と考え方の違うムスリムにも出会った。多様な価値観に触れる中、教義や、それを取り巻く現状への疑問に向き合った。
 どうしてヒジャブ(髪を隠す布)を着けるのだろう…。ムスリム以外は地獄に落ちるっておかしくないか…。イスラム国家アフガニスタンでの女性抑圧はどう受け止めればいいの…。
 聖典クルアーンに「適当と思われる女性たちから2人、3人または4人と結婚しなさい」と記されていることも「複数のパートナーを同時に愛すってどういうこと?」と、ふに落ちなかった。ムスリムが多数集まる公開の場で直接、問いただしたことがある。
 「一夫多妻がオッケーの理由は何でしょうか」

 自分の頭で納得しないと進めない性格。とことん考え、現時点でたどり着いたのは「教徒が間違った解釈で駄目にしている面もあるが、教え自体はいいもの」との答えだ。「食べ物や婚前交渉に関する制約のおかげで私自身の体や心は守られてきた」とも感じる。
 信仰を肯定できるようになってきた今、日出町でムスリム土葬墓地の整備が地域の反対に遭い、頓挫したニュースは「自分ごと」として響く。
 エジプトルーツの父、日本人の母の間に生まれた日本国籍の私―。両親は「二つのすみか」を意味するアラビア語にちなみ、ダリーンと名付けてくれたという。両国の架け橋になってほしい、との願いが込められているそうだ。
 「自分の国で死ねと言うけれど私の国は日本。同じ日本人が土葬を求めていると分かれば、社会は受け入れてくれるのかな」

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