プロレスリングFTO(大分市)に、高崎もん吉という覆面レスラーがいる。初めて聞いたという人は多いかと思うが、想像の通り「高崎山の猿」をイメージしたキャラクターだ。今年、デビュー20周年を迎え、FTOは7月19日と20日、大分市の高崎山自然動物園おさる館で、「モンキーアタック」と銘打った記念大会を開催した。
高崎もん吉は、猿の顔を模した覆面をかぶり、赤い尻に尻尾を付けた作業用のつなぎ姿でリングに立つ。身長160センチ、体重70キロの小柄なレスラーで、2005年に、当時大分市内にあった大分イベントホールでデビューした。
覆面の表情(デザイン)は「面白い」とも「かわいい」とも言え、猿のような奇声を発し、こざかしい反則を仕掛けるなど、コミカルな試合運びが売りだ。客席を沸かせ、大会の序盤から会場を盛り上げていくセンスがピカイチのため、第1試合や第2試合といった、いわゆる「前座試合」にカードが組まれることが多い。
記念大会の会場となった高崎山自然動物園おさる館の研修室(3階)は、とにかくプロレス会場としては狭い。では、なぜここでやることになったのか。
FTOのスカルリーパー・エイジ代表は「知られていない、使われていない公共施設を有効に活用できないかと思った」と話す。この発想には社会性がある。また、今大会の主役・高崎もん吉のための興行だと考えれば、高崎山関連施設で試合を組んでこそ意味があるというものだ。
研修室は狭い上に、床から天井までは3メートルほどで十分な高さも確保できない。このため、リングは脚の部分を短くして組み立てる低床型(高さ約180センチ)を設営した。猿のように跳び回ったり、空中殺法を放ったりするのは高崎もん吉の持ち味だけに、天井の低さは、そうした動きが封じられてしまうということでもある。さぁ、どうする。
高崎もん吉は前座試合が多いと前述したが、この大会は何と、デビュー20周年にして初のメインイベント(その興行でもっとも価値がある団体イチオシの最終試合)だというから驚いた。初日に組まれたカードは「ザック・アブストラクト&オリバー・ケインVSスカルリーパー・エイジ&高崎もん吉」のタッグマッチだ。
スカルリーパー・エイジがパートナーであることは救いだ。しかし、自身とは体格がはるかに違うパワフル外国人コンビをどう攻略するかが高崎もん吉の見せどころ。超満員札止め、約180人の観客が見守る。
「パワーでは勝てない。ならばこれでも食らえ」と言わんばかりに、相手の爪先を思い切り踏みつける高崎もん吉。リングシューズを履いているとはいえ、爪先は痛い。続けて顔面かきむしりの反則攻撃。しかし、隙を突かれて相手2人に捕まってしまった。しばらくパンチやチョップ、ストンピング(勢いをつけて踏みつける技)を受け続け、会場の女性客からは「かわいそーっ!」と同情の声が飛ぶ。なんとかスカルリーパー・エイジにタッチし、難を逃れることができた。
試合は一進一退の展開。終盤、オリジナルネーミングのメキシコ系回転式固め技「ラ・マヒスト猿(ラ・マヒストサル)」を仕掛け、オリバー・ケインをカウント2まで追い込む。さらにセントーン(跳び上がり、相手の体の上に自らの体を背面から落とす技)でたたみかけ、コーナーのセカンドロープ(3本あるロープのうち、真ん中に位置するロープ)に上った。
天井を気にしながら、ダウンしたオリバー・ケインめがけて後方宙返り。そして、回転の勢いをつけた頭突きを脇腹のレバーの辺りにぶち込み、そのままフォール。3カウントを奪った。
見たことのない技にざわめく客席。新必殺技「ムーン猿ト・ヘッドバット(ムーンサルト・ヘッドバット)」だ。
勝利を飾った高崎もん吉はマイクを持ち「皆さん、こんにちはーっ!」と、試合直後にしては妙に明るい声でしゃべり始め、会場が笑いに包まれた。「20年、長いです。きょうは大変恥ずかしいところを何度も見せてしまいましたが、自分なりに頑張りました! 今後もヨロシク」と客席にアピール。拍手に包まれた。
初日の試合が無事終わり、ホッと一息ついたところで、いきなり2日目の対戦カード発表。高崎もん吉はまたしてもメインイベントに出場となり、今、九州で一番強いとされるド迫力超重量級王者・岡崎恭也のベルトに挑戦するシングルマッチが決まった。
名誉なことだが「これはマズいことになった。どうしよう」とおじけづく高崎もん吉の姿がそこにあった。
(続く)