【共生リアル―新たな隣人たち】大分県の日本人ムスリム㊥ 異教拒まず柔軟に「まず直接話して」

自宅ソファでイスラム教の聖典「クルアーン」を手に語る小野沢優里さん=5月、別府市

 5月下旬、別府市内のマンション一室。イスラム教徒(ムスリム)になって数年という団体役員小野沢優里さんは、飾らない笑顔で自宅居間に招き入れてくれた。
 テーブルにソファ、観葉植物…。インテリアに表れる信仰生活の片りんを期待していたが、棚の聖典「クルアーン」が目につくくらい。片付け損ねたらしいクリスマスツリーが飾られたままになっている。
 小野沢さん自身が半袖シャツに帽子と軽装だ。ムスリムの女性が髪を隠す布「ヒジャブ」もあまり使わないという。「外見にこだわってもね」。語り口が気さくで、自然と場が和む。
 「マリアム」の宗教名を持ち、礼拝や断食といった務めに励む。ユニークなのが「アッラーの他に神はなし」と説く一神教に生きながら、キリスト教や仏教、神道から学ぶ姿勢も大切にしている点だ。
 一色に染まらず、視野の広い人間でいたいという。「他の宗教が間違っているとは思わない。一般的なムスリムがどう見るかは分からないけれど、こういう信仰の形もあるんですよ」

 市内で生まれ育った。キリスト教系幼稚園に通い、ミサや教会が身近だった。父の真言宗寺院を継ごうと修行した経験もある。大病をして自然農法に関心を抱いたのがきっかけで、神道にも目を向けてきた。
 宗教は常に身近で、信仰心は大切だと信じてきた。その中でもイスラム教は「特別に感じる」という。
 5年ほど前、東京都内で日本語を教えるボランティアをしていた時代、生徒のインド人やパキスタン人がムスリムだった。自分の子どもに算数を教えてくれたり、サッカーの相手をしてくれたりする姿が強く印象に残った。
 「人の役に立ちたいという言葉に偽りがなく、見返りも求めない。まさに『与える人』たち。一緒にいると居心地が良くて、ファミリーの一員になりたいと思ったんです」
 数年前、別府市若草町の礼拝所(モスク)「セントラル九州マスジド」で改宗した。

 家族の中でムスリムは自分以外にいない。仕事や子育てなど日常生活の中で、宗教的な決まりとの両立が難しい場面もあるが、自然体で折り合いをつけているという。
 例えば豚肉を口にすることは禁忌とされているため、本来は遠ざけたい。でも、子どもが「豚しゃぶを食べたい」と言えば作ってやる。初詣は神社に行く。
 「一日5回のお祈りだって完璧にはできない。全くやらないのは気持ちが悪いといった感じです」
 一方、教義をもっと深く学び、敬虔(けいけん)なムスリムに近づいていきたいとも話す。

 今、イスラム教に偏見を持つ人と出会ったら「私もムスリムですよ」とあえて伝えるようにしている。
 イスラム原理主義組織「アルカイダ」が関与した米中枢同時テロ(2001年)などを受け、人々が悪い印象を抱くのは理解できる。「だからこそ本当の姿を知ってほしい。接してみれば分かるはず」との思いがあるからだ。
 まずは直接、話してみてください―。
 日本人に生まれ、ムスリムになった自分の役割の一つは、そんなメッセージを日本社会に発信していくことだと考えている。

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