【問う 時速194km交通死亡事故】続・許された危険㊤ 法規制なき「高性能」、最高速度制限は企業任せ

194キロ死亡事故の加害ドライバーが運転していたBMW製の車

 車には、単なる移動の手段を超えた嗜好(しこう)品の側面もある。走行性能は主要な魅力の一つだ。メーカーは加速や操作性を高める技術を競い、その性能に愛好家が引き付けられる。
 2021年2月に大分市の一般道(制限速度60キロ)で時速194キロ死亡事故を起こした男(24)もその一人だったのだろう。
 車の運転免許を取得して間もない19歳のとき、ドイツのメーカー「BMW」の車を手に入れた。「スムーズな加速に興味を持った。デザインもかっこいい」。男は24年11月の一審大分地裁で、最高速度250キロのスポーツタイプの車を購入した理由を明かした。
 公道で性能を確かめ、150キロを超える速度を頻繁に出していたという。その結果、対向車線を右折する車に激突し、何ら落ち度のない被害者の命を奪う結果となった。

 20年8月には神奈川県川崎市の首都高速道で、同じくドイツの高級ブランド「ポルシェ」のスポーツカーが200~268キロで走行。前方の車に追突し、夫婦2人を死亡させる事故が起きた。
 今年1月27日、横浜地裁は加害ドライバーの50代の男に危険運転致死罪を適用し、懲役12年を言い渡した(東京高裁に控訴中)。運転していた車は最高速度340キロの「高性能」だったという。
 ヨーロッパで生産される車の最高速度は200キロ以上で設計されている。「アウトバーン」と呼ばれるドイツの高速道路の一部区間に速度制限がないことなどが背景の一つとされる。
 「ハンドルを握るのはお客さん自身」。あるメーカーの担当者は、車の性能と速度超過に因果関係はないと強調する。
 確かに、「業界内の申し合わせ」で原則180キロまでしか速度を出せない国産車であっても悪質な事故は相次いでいる。宇都宮市の国道で起きた死亡事故(23年2月)は、時速160キロ超で走行したトヨタ車が引き起こしている。
 保安基準の改正などで車の最高速度をより厳しくすることは可能だが、国は否定的だ。国交省車両基準・国際課は「速度のリミッター装置を付けても、個人で解除することもできる。規制だけでは危険な運転を防げない」と説明する。

 対策に乗り出す海外メーカーもある。
 スウェーデンの「ボルボ」は21年、所有者が車の最高速度を決められる「ケアキー」を導入した。50~180キロの間で、1キロ単位で設定できる。運転に不安がある若者やお年寄りが運転する際、家族が速度に制限をかけるといった用途を想定しているという。
 「事故がなくならない主要な原因は、速度の出し過ぎにある」。ボルボ・カー・ジャパン(東京)の広報担当は語る。20年5月には200キロを超えていた上限速度を、世界中で一律に180キロまで引き下げた。スピードが出る車を好むヨーロッパ市場で競争力を失う懸念があったものの、「ドイツでボルボ車の購入をやめる人もいたが、逆に安全性の取り組みに共感するお客さんもいた。全体として販売の落ち込みはなかった」。

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 車の利便性を享受しながら、一方で多くの命が失われている。「許された危険」とも呼ばれる車優先の社会は、法規制だけでは変えられないという現実もある。車に関わる企業の安全技術開発と課題を追った。

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