【豊後大野】香港在住の会社経営吉野藍さん(42)が、豊後大野市出身の父・孝彦さん(享年88)の夢を実現しようと、江戸初期の陽明学者熊沢蕃山(くまざわばんざん)(1619~91年)の銅像を同市に寄贈した。市は市内緒方町の原尻の滝近くに設置し、3月27日に現地で贈呈式を開いた。
藍さんと母俊子さん(83)によると、孝彦さんは町内馬場で造り酒屋を営む家に生まれた。幼い頃から家の横のある緒方井路で遊んだり、田植え後に体を洗うなどしていた。父や祖父から井路掘削に貢献した蕃山の話を聞き、銅像を作るのが夢だった。
県内で高校教諭として働いた後、40代になって香港に移住。日本語が不自由な日本人の子どもたちのための日本語教室や幼稚園を設立するなど活躍。2017年に亡くなった。
孝彦さんから蕃山の話を聞いていた藍さんは「父の夢をかなえるのが僕の責任」と考えた。孝彦さんが生前に銅像数点を作ってもらっていた大分市在住の彫刻家佐脇健一さん(76)に制作を依頼した。
完成した銅像は高さ約1メートル、台座を合わせると約2メートル。蕃山が滝や緒方平野、自然を眺めている姿を表している。
贈呈式には約20人が出席。俊子さんが「蕃山は樹木の伐採を禁じ、植林を進めた。夫はそんな姿にも感銘を受けた」とあいさつ。藍さんは「いい作品ができ父も喜んでくれていると思う。設置場所も最高」と喜んだ。
蕃山は備前岡山藩に仕え、政治経済、農業土木、教育など幅広い功績を残した。1660年に岡藩3代藩主の中川久清に招かれて、治山治水の指導や政策提案をし、緒方井路や城原井路の開削工事などに携わった。両水路は現在も使われ、田畑を潤し続けている。